ディズニー「7000人削減」に見た意外な不調の真実 加入者1.6億人超の動画配信「Disney+」が重しに

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ディズニープラス
莫大な加入者数を抱えて華々しく見える「Disney+」だが裏側の苦悩も見える(画像:【ディズニープラス】公式サイト)

以上がDisney+の状況である。冒頭で改革の一環と述べたが、2020年に発表し2021年に実施したテーマパーク従業員の削減に続き、今回も事業のテコ入れを狙う。

もう1つの事情

ところでこの発表の舞台裏では同社の株価の不調があった。2020年のコロナ禍で大きく下落した株価は、急回復するように2021年に高値をつける。しかしそこから下落し、コロナ禍以前の水準をうろうろしていた。

株主への配当は2021年、2022年と停止している。同社は冒頭で紹介したボブ・アイガー氏はCEOを退いていたが、再び舞い戻った。同氏は株主への配当も再開したいという。

ただ、同社の経営全体に不満をもっていたのが投資家のネルソン・ペルツ氏だ。彼は投資会社を運営している。この投資会社「トライアン・ファンド・マネジメント」を通じてディズニー株を大量購入した。発行済株式の0.5%で9億~10億ドルに相当する。

同投資会社はディズニーに対して経営改革として、同社関係者をディズニーの取締役を入れるように提案している。いわゆるアクティビストだが数多くの企業へ参画している実績も持つ。もし興味があれば同投資会社がディズニーに向けた公開書「Restore the Magic」にぜひ目を通してほしい。「Trian Fund Management Restore the Magic」とでも検索すれば出てくる。これは「魔法を取り戻す」とでも訳すればいいだろうか。アメリカのアクティビストがどのように経営陣へ責任を追及するかがわかる資料だ。

●株価が低迷している
●利回りがS&P500と比べても低い
●買収企業が失敗している
●配当金が出せない状況になっている
●ストリーミング事業の累積赤字が拡大している
●同業他社(Netflix)と比べて利益水準が低い
●売上高の伸びに対して、費用はそれ以上に伸びている
●テーマパーク一本足打法になっているのは危険だ

などなど、1つの読み物として面白い。ディズニー側はすぐさま反論を出したが、株価等が低迷しているのも事実だった。だから、トライアン・ファンド・マネジメントの提案を呑んだとまではいえないが、膨張する費用の削減に手をつけるプレッシャーにはなっただろう。

なお個人的な話だが私は親子ともディズニーのコンテンツを楽しんでいる。夢の国にリストラクチャリングやアクティビストがいるかは知らないが、同社の業績推移を見守りたい。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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