岸田政権肝いり「スタートアップ支援」の重大欠陥 日本がフランスの成功例から学べるポイント
加えて、現状では一般の投資家がエンジェルファンドに資金を投じることは、法的な制約のために容易ではない。日本の法律では、LP(リミテッド・パートナー)と呼ばれる投資家は、1つのファンドに49人までしか投資できない。しかも、一般人保護の観点から、LPは機関投資家か超富裕層、つまり株や債券で1億円以上の投資実績がある人に限定されている。
この制限は、より多くのエンジェル資金を生み出すための大きな制約となっている。フランスやイギリスが示したように、政府は中産階級がエンジェルファンドに投資できるようにする一方で、過剰なリスクから保護することができる。しかし、これまでのところ、日本の政府関係者はこの法律を見直すことを拒んでいる。
政府は、ファンドに投資できることと、49人という制限をなくすことの両方の問題を解決する必要がある。ファンドの問題だけを解決すれば、この措置の恩恵を本当に受けられるのは、キャピタルゲインが20億円あり、特定のエンジェルファンドの49人の投資家の中に入ることができる少数の富裕層だけということになる。
法律が制定される前に、政府がこれらの設計上の欠陥を修正する時間は残っているが、残念ながらその可能性は低いだろう。関係者が、この法案では多くの投資家を集められないと気がつけば修正されるだろうが、私がおそれているのは、関係者がその状況を「日本人はリスク回回避を好む文化のため、投資に後ろ向き」と捉えてしまうことだ。フランスは文化を変えるのではなく、よりよいデザインを導入することで成功しているのに。
日本はフランスやイギリスから学べる
フランスでベンチャーキャピタリストとして働いた後、日本に移住した自然キャピタルのビベンズ氏は、「岸田政権のスタートアップに対する取り組みに拍手を送りたい」と述べつつ、日本政府はフランスやイギリスの同様の制度からインスピレーションを得るといいのではないか、と提案する。
1990年代後半、フランス政府は、世界的な大企業の多くが国際競争力に遅れをとっていることを懸念し、イノベーション相互基金(FCPI)を創設した。
同制度は、VCやエンジェルファンドを通じて、一般の人がベンチャー企業に投資することで、多額の税制優遇を受けられるというものだ。日本のように1社に"賭ける"のではなく、政府の認可を受けた専門家が選んだ多様な新興企業のポートフォリオに資金を投じることができる。
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