岸田政権肝いり「スタートアップ支援」の重大欠陥 日本がフランスの成功例から学べるポイント

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日本では意図的に行われた改革が、結局はあまり大きな変化をもたらさない、ということが少なくない。その好例が、岸田文雄首相が打ち出した新興企業への投資優遇税制である。これは、2027年までに革新的で高成長の新興企業を10万社創出すると宣言した中で、唯一の実質的な措置である。

が、岸田首相は、新たなイノベーションを手がける企業を飛躍させるために必要なほかの施策には動かなかった。現行の提案では、上場企業、または、非上場企業の株式を20億円(1400万ドル)相当まで売却した個人投資家は、その利益を設立5年未満の適格新興企業に再投資する限り、20%のキャピタルゲイン税を支払う必要がないことになっている。

しかし、この税制優遇措置の設計が悪いため、創業に必要な資金を調達するという使命を果たせそうにない。外部資金の不足は、日本における起業家精神の向上を阻む最大の要因である。

日本は自分で投資しないといけない

現在の措置案の問題は、個人投資家が新興企業の多様なポートフォリオを持ち、専門家が管理するエンジェルファンドではなく、自らが個々の企業に投資する必要があるという点だ(エンジェルはVCよりも小規模で設立年数が浅い企業に投資する)。

一般投資家でそうしたリスクを取る人はほとんどいないだろうし、取るべきでもない。その理由はこうだ。アメリカの平均的なエンジェルファンドは、わずか3年半で初期投資の2.6倍という驚異的なリターンを得たが、投資したスタートアップの半分で損失を出している。残りの半分は、全体のリターンが桁外れになるほどの利益を得ている。

専門家でさえ半分のケースで損をするのであれば、日本の素人に会社を「正しく」選ぶことを要求するのは無策である。

本当の悲劇は日本政府が簡単な解決策を見落としたことである。つまり、フランスと同じようにエンジェルファンドへの投資に多額の税制優遇を提供することだ。これであれば、株式市場で投資信託に投資するのと同じようにリスクを軽減できる。

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