岸田政権肝いり「スタートアップ支援」の重大欠陥 日本がフランスの成功例から学べるポイント

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岸田政権肝いりの「スタートアップ支援」が、フランスの同様の制度から学べることとは(写真:Kiyoshi Ota)

「1990年代は、親に会社を興したいと言えば、追放されるか、結婚もできない時代だった。不幸にも起業して失敗すれば、(銀行の)ブラックリストに載り、10年間は住宅ローンが組めなくなる。失敗が汚点になったのだ」

これは日本の話ではない。2016年に日本で自然キャピタルというベンチャーキャピタル(VC)を共同設立した、マーク・ビベンズ氏が語るのはフランスのことだ。企業、特に新興企業は、新しいアイデアを経済的価値に変えるベルトコンベアのようなものだが、かつてフランスも日本と同じように先端技術への投資で後れをとっていたのである。

新興企業が急増したフランス

それからわずか数十年後の今日、フランスはまるで別の国のように感じられる。2000年以降、フランスでは3万8000社もの新しいスタートアップが生まれ、2010年にはわずか110億ドルだった評価額も、今では2760億ドルに達している。

このうち約2500社は「ディープテック」と呼ばれる、科学的な発見や技術的革新を通じて社会を変える影響力を持つ技術の開発に携わっている。

また、2010年にはゼロだった企業価値が10億ドル以上の「ユニコーン」企業が36社ある。これに対して、日本のユニコーンの数は6社にすぎない。2018年当時、安倍晋三元首相は2023年まで20社にすると公言していたにもかかわらず、だ。

フランスのVC投資は2009年から4倍のGDP比0.12%となり、現在OECD28カ国中10位と高い水準にある。日本のVC投資も同期間に3倍に膨らんだが、18位にとどまっている。

なぜ、フランスは日本よりも成功したのだろうか。その答えは意外と単純で、フランスが優れた設計と実行を伴う制度を導入したからである。

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