今でこそ、文章を書くことを生業としている私ですが、20代前半はまったく書けませんでした。文章や文法についての本も読んでいない。文章スクールに通ったこともない。なのに、なぜ書けるようになったのか。
思い当たることが1つ。それは、知らず知らずのうちに「読むトレーニング」をしていた、ということです。
実はコピーライター時代、なかなか文章がうまく書けないなか、改めて思ったことがありました。それは、自分はどんな文章を書いてみたいのか、でした。
自分が描いた「ゴール」がないのに、そこに到達することはできません。そこで、自分でいろいろな雑誌を読んでみて、選んだのが朝日新聞出版の週刊誌『AERA』でした。文章に品があって、漢字やかなのバランスも自分好み、おまけに経済関連の記事から文化、芸能まで幅広い領域の記事が掲載されている。こういう文章が書けたらいいなぁ、と思ったのです。
以来、いまに至るまで毎週『AERA』を必ず読んでいます。会社員時代は、電車の通勤のときに。フリーランスになってからは、夜のお風呂の中で。毎日、少しずつすべての記事を読み込む。これをもう20年以上、続けています。
おそらく3年か、5年か、そのくらいでも十分に効果があったのでは、と想像しています。というのも、毎日のように読んでいたわけですから、知らず知らずのうちに『AERA』の文体が自分の中に染み込んでいったのです。
●「です、ます」調と「で、ある」調の使い分け
●書き出しと締め
●適度な行替え
●漢字とかなのバランス
●わかりやすさの程度
●社会人向けに必要な語彙
●専門用語をどこまで解説するか
●長い文章をどう構成していくか
●書き出しのインパクト ……など
なので、「読むトレーニング」こそ、最も簡単で、最強の学び方だと思っています(ちなみに偶然にもいまは「現代の肖像」という創刊以来の名物ページをときどき書かせてもらっています。依頼が来たときには驚きました)。
「書いてみたい」文章を毎日読む
私の場合は、「こんな文章を書いてみたい」というのが、たまたま『AERA』でしたが、それぞれで、「こんな文章を書いてみたい」を定められるといいと思います。それこそ、「ゴール」がなければ到達はできません。
そしてできれば、継続的に毎日、少しずつ読み込めるものがいい。特定のメディアでもいいですし、特定の書き手のコラムやブログでもいいと思います。毎日、読み込んでいくことで、確実に文章が自分の中に染み込んでいくはずです。「こうすればいい」が、頭で覚えるのではなく、自然にできるようになっていくのです。
やがて、書きたいと思った文章に近づいていくことができるはずです。「読むトレーニング」、ぜひおすすめです。
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