中国の地方別成長率、上海と吉林はマイナスに 新型コロナの打撃の度合いでばらつき大きく

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上海市は2022年春のロックダウンの打撃が大きく、同年のGDP成長率がマイナスを記録した

中国に31ある省・直轄市・自治区の2022年の経済指標が出そろった。同年は新型コロナウイルスの感染拡大や旱魃などの影響が予想を超える打撃となり、すべての地方のGDP(域内総生産)成長率が、年初に設定した目標値に届かなかった。

新型コロナの打撃の度合いや産業構造の違いを背景に、2022年は各地方の成長率が大きくばらついたのも特徴だ。なかでも新型コロナを封じ込めるためのロックダウン(都市封鎖)が長期化した上海市と吉林省は、GDP成長率が前者は0.2%、後者は1.9%のマイナスを記録した。

各地方が公表したデータを財新記者が整理したところ、2022年の中国全体の成長率である3.0%を上回る成長を達成したのは、31地方のうち16地方だった。そのなかのトップは江西省と福建省の4.7%だ。

江西省と福建省が同率首位

江西省は近年、地方別の成長率ランキングで上位の常連になっている。「サービス業が安定して発展しており、製造業のレベルアップも加速している」。ある証券会社のチーフエコノミストは、背景をそう解説する。江西省の第3次産業は2022年に前年比4.2%の成長を実現し、全国平均の同2.3%を大きく上回った。

一方、福建省の好調について、このエコノミストは次のような見方を示した。

「2022年春に上海市がロックダウンに突入したとき、(中国有数の産業集積地である)長江下流地域ではサプライチェーンが寸断し、企業活動が大きく制約された。そんななか、福建省は新型コロナの影響が相対的に小さく、輸出製品の代替供給元として多くの受注を獲得できたことが、GDP成長率の底上げにつながった」

本記事は「財新」の提供記事です

別のエコノミストによれば、江西省と福建省は(電気自動車向けリチウムイオン電池などの)「新エネルギー産業」の発展の好機をとらえ、関連企業の育成に注力してきたことも、高い成長率の実現を後押ししたという。

(訳注:江西省にはリチウム製品大手の贛鋒鋰業[ガンフォンリチウム]、福建省には車載電池大手の寧徳時代新能源科技[CATL]が本社を構え、関連産業が集積している)

(財新記者:範淺蟬)
※原文の配信は1月29日

財新 Biz&Tech

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