ソニー社長交代で見えた「再建→再成長」戦略 複雑さを増すグループ経営と「CFO/COO兼務」

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一方で中心にあるソニーGの経営は複雑さを増していく。

事業ごとに経営環境は異なり、新規事業や既存事業の強化を行ううえで、それぞれに異なる視点、視野での経営判断が必要だ。そして何より、まったく異なる事業領域が混在する中で限られた経営資源をどのように配分するかが大きなポイントとなってくる。

CFO/COO兼務の重要性

十時氏はパーパス経営の中で、コンテンツIPの大型買収、あるいはイメージセンサー工場への大型投資、5000億円に及んだ自社株投資も実現した2兆円規模の戦略投資枠設定など、財務面でパーパス経営を支援してきた。

いずれの案件でも十時氏は、各案件ごとの市場環境、ハーベストサイクル(投資から回収までの期間)など事業を十分に把握したうえで、必要な財務支援を行ってきたと吉田氏は言う。

不確実な社会情勢が続く現在、AIやEVシフトなど大きな技術・社会の変革が起きようとしている中で、つねに新しい社会情勢に適した、そしてスピードの速い経営を行っていく必要がある。吉田氏はCFOである十時氏自身がソニーGを取り囲む業務領域すべてに深く関わることが重要だと考えを固め、2022年7月にはCFOとCOOの両方を十時氏に任せるという案を、指名委員会及び十時氏本人に伝えた。

「十時が各事業について深い知識がないかといえば、もちろん現時点でも深い理解のうえでCFOの職をまっとうしてくれている。しかし、不安定な現在の社会、そして新たな技術が登場し始めている中で、より深く事業に関わることが、ソニーGの企業価値を高めるうえで重要だ」(吉田氏)

これが一般的な事業会社であれば、予算を握るCFOと業務執行を司るCOOが同一人物という点が問題視される可能性もある。

しかしソニーGの場合、実際の業務を執り行うのはソニーGの周囲に配置された各事業会社だ。すなわちソニーGのCOOは、実際に業務を行っている各事業会社と密に情報と戦略を共有するが、実際に事業を現場で進めるわけではない。

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