【前編】優しさを拒絶する7歳の彼女が抱える傷 勉強が苦手で友達もいない、その裏にあった事
被虐待児(愛着障害児)がとる行動は、普通の子どもたちを基準に考えていくと理解できないことが多い。
今回紹介する事例も、彼らの特殊な行動の背景に、異常な家庭環境があるのを見落とされてしまったものである。しかし、彼らが抱えている事情が見えてくると、その行動の背景には「孤立」が悲しみを帯びて淡くひろがっていることを感じられるはずだ。
周囲に溶け込めず漂うような存在感
小学2年生の美山穂乃果さん(7歳)は、2時間目の授業と3時間目の授業のあいだの中休みを、教室で自分の席にじっと座ってひとり過ごしていた。校庭からは楽しそうな声が聞こえていた。席を立ち、2階にある教室から階段で一階に下り、下駄箱で靴を履き替えて校庭に出た。多くの子どもたちは、サッカーをしたり、かけっこをしたり、縄跳びをしたり、または木陰で円になって数人でおしゃべりしたりしていた。
みんな楽しそうだ。穂乃果さんは、校庭をひとりでふらふらと歩き回り、立ち止まり、また歩くことを何度か繰り返し、鬼ごっこをしている子どもたちに近づいた。
しかし、仲間に入れてもらうわけでもなく、子どもたちの周りをうろうろしているだけだった。一見すると、一緒に遊んでいるように見えた。けれども遊んでいる子どもたちの近くにいるだけだった。――漂うように、ふわふわと、ただその場にいた。
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