【国内患者20万以上】「潰瘍性大腸炎」治療の未来 【持病を生きる】20万人もいるのに「指定難病」

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土屋:長い間、免疫とか炎症の何が悪いか研究してきて、それを治すためにやってきましたが、今度は「粘膜」とか「上皮」が悪いことがわかって、それをいかに治すかを突き詰めていった。やはり、城壁というか、「粘膜の壁」がきちんとできると、潰瘍性大腸炎が再発する機会は減っていくんじゃないかってところで。あとはそういうお薬を飲むだけで、壁がちゃんとできるようになったらいいなと。

佐々木:飲み薬なんですか?

土屋:いえ、今はヒトの細胞にふりかけているだけなんです。なので、いずれ口から、あるいはお尻から「テロメアの伸長剤」を投与すれば、細胞に変化してくれないかと期待しています。

「ひとつの単語」に飛びつかず「メカニズム」「機序」を知る

佐々木:いずれは特効薬になる可能性もある、ということですか?

土屋:これがまた、難しいところで。これで「テロメア」というと、「テロメア」という言葉だけがひとり歩きしそうだから、それも違うのかなと(笑)。今はそういう「可能性」があると思って、さまざまな企業からも協力を得ながら研究を重ねているっていうだけです。

佐々木:先生のお話を聞いて思ったのは、「ひとつの単語」だけにみんなすぐ食いつくんですよ。「テロメア」とか「iPS細胞」とか。

土屋:そうなんです。我々は「ひとつの糸口」として考えている段階なので。

佐々木大切なのはその「単語」じゃなくて、「メカニズム」や「機序」を知ることですね。今日は大変勉強になりました、ありがとうございました。

「新しい研究が進んでいるのは、患者としてはうれしい」と佐々木氏。患者と最先端で研究を行う土屋教授との対談は、2時間近くに及んだ(写真:梁川剛)
佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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土屋 輝一郎 筑波大学医学医療系消化器内科教授

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筑波大学医学医療系消化器内科教授、難病医療センター副部長。潰瘍性大腸炎などを研究する日本炎症性腸疾患学会では専門医システム委員会委員長を務め、制度の改革に着手。東京―筑波の二拠点生活を送りながら、研究に没頭する日々を送る。

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