宗教「勧誘に注意」の報道で団体名を伏せられる謎 統一教会のブームが過ぎたら元通り、では困る

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この空白期間に、統一教会と政治家の関係を記事にしてきたのは、鈴木エイト氏と、鈴木氏の記事を連載してきた扶桑社の「ハーバー・ビジネス・オンライン」(2021年にサイト全体の記事配信を停止)。そして単発だと、鈴木氏や私のルポを掲載した雑誌や「日刊ゲンダイ」くらいだった。安倍氏のビデオ出演も、「やや日刊カルト新聞」で第1報を出したのは鈴木氏だ。

統一教会以外についても同様だ

「やや日刊カルト新聞」創刊直前の2009年夏、幸福の科学が「幸福実現党」を結成し衆院選に337人もの大量の候補者を立てた。このこと自体は全国ニュースになったが、この教団の過去の問題を報じた新聞は当時ゼロだ。

2014年に、詐欺罪で服役していた法の華三法行教祖・福永法源氏が出所し、翌2015年に信者たちを集めて「復活祭」を開催。福永氏は詐欺罪とは認めないと言い放ち、信者たちと相変わらずの「最高ですか~!」「最高で~す!」の掛け声を披露した。まったく反省はなかった。

これを時事ニュースとして報じた一般紙やテレビはない。私は潜入取材の映像を「やや日刊カルト新聞」で公表した。複数のテレビ局から映像を貸してほしいと依頼が来たが、「潜入取材の映像は使えない」「すでに罪を償った人の顔や名前は出せない」という理由で、結局、放映されることはなかった。

2015年に山梨県河口湖町で高校生が祖父母を殺害する事件が起こった。幸福の科学の2世信者で、教団が運営する学校への進学費用目当ての犯行だった。『週刊新潮』がこれをスクープし、「やや日刊カルト新聞」が公判の傍聴レポートを掲載したが、新聞は幸福の科学にいっさい言及しなかった。

2016年の参院選では、浄土真宗親鸞会の現役信者・柴田未来氏が、石川選挙区の野党統一候補となった。民進党(当時)が擁立し、機関紙「しんぶん赤旗」で親鸞会を名指しでカルトと報じていた日本共産党までもが推薦した。「日刊ゲンダイ」がスクープしたものの、ほかの一般メディアは完全に沈黙。もちろん「しんぶん赤旗」もだ。

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