世帯年収300万円台で東大合格、学生が感じた現実 保護者の世帯年収1150万円以上は2割にのぼる
夏の東大模試では、数学が80点満点中3点しか取れず、焦りがあった。3年生の秋、これから追い込みというところで、ただでさえ裕福ではない家庭状況が一変する。父が勤めていた会社の業績が思わしくなく、独立するもなかなか軌道に乗らない。そして、母が病に倒れた。かなり進行した乳がんだった。
「父は日雇いのアルバイトを掛け持ち、帰りは夜遅く。通院や入退院の付き添いなど、母の世話はすべて僕が引き受けました。勉強する時間はあまり取れなかったですね」
その結果、東大は不合格。試しに受けた早稲田大学やMARCHにも落ちた。全敗に落ち込むかと思いきや、布施川さんはすぐ切り替えた。
アルバイトと予備校の往復で無駄を省く勉強法を
「東大は不合格者に対して、合格までどのくらい足りなかったかのランクを教えてくれるんです。僕は不合格者の中で真ん中くらいのランクでした。夏の時点で東大合格の圏外も圏外で、予備校や塾に通っていなかったので、あと1年あれば行けるんじゃないかと、逆に勇気づけられました」
浪人させてほしい、予備校にも少し通わせてほしいと頼み込むと、両親は借金をして費用をかき集めてくれ、足りない分は祖母が工面してくれた。ただ、生活費は自分で稼ぐしかない。
「毎日の食費に予備校までの交通費を稼ぐために、週3日、ドラッグストアでアルバイトをしました。朝から夕方まで8時間働いて、終わったら予備校に行くというような生活でした」
周囲の受験生に比べれば、勉強に充てる時間は圧倒的に少ない。母の病室で看病の合間に勉強することもあった。このハンデをどう克服するか。そこで考え出したのが、無駄を省く勉強法だ。
「自分に合わないと思った参考書や勉強法はすぐやめました。どんなに評判がよくても、自分の身にならなければ効率が悪い。実践して取捨選択を繰り返していきました。そして、満点を目指すのではなく、合格ラインの少し上を目指しました」