ホームセンターの「プロ業態」参入が相次ぐ事情 業績は好調、目指すは金物・資材の「ワークマン」

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現場の販売員には幅広い専門知識が求められるが「商品説明で困っていたら、通りすがりの職人さんが教えてくれる場合も多い」(コーナンPRO世田谷八幡山店の赤松良隆店長)。店員は接客を通して学んでいくが、コーナンやコメリでは元職人などの社員採用も進めている。

ホームセンターの市場規模と店舗数

好調なプロ業態の出店数が増える一方、ホームセンター業界は頭打ちが続く。コロナ禍の巣ごもり需要で2020年度に市場規模4兆円を突破したものの、2022年度は再び3兆円台に落ち込む可能性がある。業界全体が客数減に苦しむ中、プロ業態だけはプラスで推移する。各社が参入し、限られたパイを奪い合う構造となっている。

2006年から長野でプロショップを展開するプラスワンは、数年かけてホームセンターから業態転換することで大手との競合を避けてきた。「かつては金物屋からホームセンターへ客が流れたが、ホームセンターがプロショップを作れば職人はそちらに流れていくのは当然」(矢崎金雄社長)と見る。

過熱するパワーゲーム

職人にとって買い物は仕事の一環であり、一般客と交ざらない専門店のほうが使い勝手がいい。プロショップを出店すれば、近隣のホームセンターの職人客を取り込むことができる。顧客を細分化して専門店化することは、成熟市場での生き残り策となる。作業衣料は「ワークマン」の独壇場となったが、プロショップの勝負はこれからだ。

プラスワンは大手参入について「当社とは店舗作りの考え方が違う。うちはターゲットを絞り、年に数点しか売れない商品も置くし商圏は100㌔㍍と広い」(矢崎社長)。品ぞろえにこだわる一方で「ここ数年で商品の使い方など、基本的な質問をしてくる職人のお客様が増えている」と語る。大手と競合しない独自戦略で差別化を図りながら、今年は長野県内に4店目の新規出店を控える。

出店が相次ぐプロショップについて大手卸売業者は「ホームセンター各社にとって、プロ業態の出店は難しいことではない。ただ後発組は品ぞろえや接客、EC対応など強みをどこに置くか模索している」と語る。頭打ちの業界で生き残りをかけたパワーゲームが、一段と過熱している。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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