「なぜか眠れない」哲学者たちが考える睡眠の正体 身の回りの物事から「思考習慣」を身につける

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先ほど、睡眠はすべての機能が停止することだと紹介しましたが、理性は別です。実は、これはアリストテレスも論じていたことです。だから、私たちは夢を見るのです。睡眠とは、夢を見ることでもあります。

どの程度夢を見るかは人によりますし、その時々の心身の状態によるでしょうが、まったく夢を見ないということはありえません。仮にそういう人がいたとしても、それは覚えていないだけです。なぜなら、夢とは人が生きるうえで不可欠なのですから。

●ジークムント・フロイト(1856~1939年)

精神分析学の父ジークムント・フロイトは、まさに夢の仕事という表現をしました。夢のような素敵な仕事という意味ではありません。夢が果たす役割ということです。

彼によると、人間が夢を見るのは、起きているときに経験したことを考え直そうとするからなのです。人は起きているとき、さまざまな経験をします。それらを自分中心に考え直すのが、夢の仕事に他ならないのです。

夢を見て心の整理をする

なぜ、そんなことをするのか? そうすることで、安心するからです。
不可解なことも、不安なことも、自分中心に理解し、考え直すことで、人は安心して生きていけるわけです。「ああ、あの出来事は自分にとってそういう意味があったのか」と、夢の中で位置づける。それによって安眠し、また翌日から元気に生きていける。

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生命維持にとってもそうですが、夢を見て心の整理をするためにも、よく寝ることが大事なのは間違いないようです。そして何より、1日をリセットするためにも――。

「寝たら忘れる」などと言いますが、あれは本当です。私たちは眠ることで新しい1日を迎えます。どんなに嫌なことがあっても、眠れば別の日が訪れます。記憶を持たざるをえない人間という存在にとって、生きる世界が日々リセットされるのは、大きな救いなのではないでしょうか。だから、ちゃんとリセットできるように、よく寝ることが大事なのです。

「思考体力」を使って考え続ける「思考習慣」を身につけることができれば、失敗も、挫折も、学びにでき、成功につなげることができるでしょう。
「思考習慣」を身につけることに、時間も場所も、まったく関係ありませんし、お金は1円もかかりません。忙しくて余裕がなかったり、面倒くさくなって考えることをいったんやめても、諦めずにまた考え続ければ思考習慣が身についていくのです。

小川 仁志 哲学者、山口大学国際総合科学部教授

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おがわ ひとし / Hitoshi Ogawa

1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後 期課程修了。専門は公共哲学。商社マン(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)という異色の経歴を持つ。徳山工業高等専門学校准教授、米プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で新しいグローバル教育を牽引する傍ら、「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。また、テレビをはじめ各種メディアにて哲学の普及にも努めている。NHK・Eテレ「ロッチと子羊」では指南役を務める。
『手塚治虫マンガを哲学する 強く生きるための言葉』(リベラル社)や『ざっくりわかる8コマ哲学』 (朝日新聞出版)など、100冊以上出版している。

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