社会の自然災害への抵抗力を高めるために、企業はどう貢献すべきか
■責任ある関与のための準備が必要
災害のリスク削減と復興努力に民間セクターが関与するには、企業は長期的に、または日常的に時間とエネルギーとリソースをそのために費やす必要がある。通常の事業と同様に高い効果を上げるには、会社組織のトップから下へ、そして下からトップへの密接な関係を築く努力が必要だ。企業が政府機関や民間組織と救援活動を素早くコーディネートしなければならない災害直後には特に重要となる。
社員を地震対策や復興努力のボランティアとして派遣する企業は、社員に適切な訓練を与えることが必要だ。米ネットワーク機器大手のシスコシステムズと米国赤十字社は、地震対策として重要な原則に従って社員を訓練するために、2010年に世界ボランティア・イニシアティブを発足させた。緊急救命に向けた大規模なケアの提供、仮設避難所、食品、物資の配給、そしてボランティアの機会の把握だ。
赤十字史上最大の企業ボランティア・プログラムである「シスコの準備」イニシアティブでは、米国と世界二十数カ所の赤十字支部で3000人を超える社員が緊急対策の訓練を受けることになる予定だ。
長期的なかかわりの例としてWEFの報告書は、「災害対策におけるエンジニアリングと建設業の新たな官民提携に関して、大規模災害後の再建設は長期にわたる作業である」ことを強調している。05年にアメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナの際には、エンジニアリング会社のCH2M HillとAMECの関与は、直後のがれき除去作業や仮設避難所の建設から被災地の開発復興プログラムにおける技術サービスまで3年間にわたった。
■パートナーシップを構築する
民間セクターの関与を確実に成功させるには、公共セクターや民間の市民団体とのパートナーシップが重要となる。災害下での人道主義的な目的達成のためには、企業は地域社会のニーズに応える建設的で責任感のある行動をしなければならない。そのためには現地のニーズを理解し、適切に対応できるよう政府機関や民間の市民団体と協力する必要がある。
災害のリスク削減では、企業は独自でもソリューションを提供できる可能性が高い。だが、官民にまたがるパートナーシップがあれば、より確かに製品やサービスを必要な人々に届けられる。企業が救援機関の作業を邪魔することなく価値を付加するには、コーディネーション(事前の調整)とチームワークが欠かせない。