なぜ?塩尻市が「自動運転」で全国から注目のワケ 地域DXのキーポイントとなる仕組み「KADO」
では、なぜ公共交通における自動運転の社会実装は難しいのか。最大の理由は、事業として成り立つ方向性が、まだしっかり見えていないからだ。
初期投資は、安全性を高めれば高めるほど、車両やシステムのコストは高くなる。電車のように電磁誘導線の上を走行させてコストを抑える方法もあるが、地域社会全体で見ると利便性に劣る場合が少なくない。
維持費についても同様だ。仮にドライバーレス(無人運転)が実現して人件費が抑えられたとしても、公共交通として安心・安全な運行とサービスを提供するためには、さまざまなコストが継続的にかかる。
問題は、コストに対しての収益だ。収益は、地域の人口や観光客数に比例する。そのため都市部や有名観光地、またイベント会場へのピストン輸送などでは良いが、本当に自動運転を必要としている地方部や山間部では事業として成り立たない。このジレンマから抜け出すことが、極めて難しいのだ。
すでに地方部や山間部では、広告収入やほかの交通機関との共通パス発行といった施策が行われているものの、それらを通じて得られる収入は限定的である。
結局、公共交通での自動運転については、市町村がこれまで路線バスやコミュニティバスの運行で地元事業者に補填してきた年間3000万~1億円程度の公費の一部を充てることが前提となる。一部には「ふるさと納税」を充てる事例もあるが、持続的な安定財源とは言えない。
塩尻市が確立したモデル「KADO」
今回、塩尻市を取り上げたのは、塩尻市にはほかの地域と決定的に違う点があるからだ。それは、「KADO」の存在である。
KADOは、塩尻市100%出資の外郭団体、一般社団法人 塩尻市振興公社が行う「子育て介護、障がい、などで就労に時間的な制約がある人が、好きな時間に好きなだけ安心して働ける仕組み」である。コワーキングと在宅での自営型テレワーカーが、約300人もいる大きな仕組みだ。
都市部企業、地域企業、自治体などから、一般社団法人 塩尻市振興公社に対して年間約2億5000万円分がアウトソーシングされておりKADOの自営型テレワーカーは準委任契約として時給965円~の給与を受け取れる。業務内容は、各種データ入力、ワクチン接種サポート、Webサイト構築や更新など各種のDX関連分野だ。
【2023年2月6日10時00分追記:初出時、誤記があったため一部訂正しました】
無料会員登録はこちら
ログインはこちら