なぜ?塩尻市が「自動運転」で全国から注目のワケ 地域DXのキーポイントとなる仕組み「KADO」
なるほど、だから長野県塩尻市の自動運転は他の地域とこんなに大きく違うのか――。
JR塩尻駅を起点に、市内3km強の公道で自動運転小型バスに試乗し、その後に2022年夏にも取材した塩尻市関係者らと改めて意見交換しながら、そう感じた。
塩尻市は、市の業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)化する「行政DX」と市と民間が共同で行う「地域DX」を、市が推進するDX戦略の両輪と位置付けている。
地域DXの中に「地域交通DX」があり、その中核として西鉄(西日本鉄道)と三菱商事の合弁事業「ネクスト・モビリティ」によるオンデマンドバス「のるーと塩尻」がある。
そして、JR/コミュニティバス/タクシーなどの既存公共交通と田園地域での乗合タクシー、山間部での小型乗合BEV(グリーンスローモビリティ)、カーシェアなど、さまざまな交通手段を駆使。また、各種送迎サービスを高度化したものとして、スクールバスの市民利用や商用施設送迎車の貨客混載等も検討している。
これらに加え、2025年の社会実装を前提として、自動運転の社会実証を2020年度から行っているところだ。
そのほか、小学生を対象に、自動運転をきっかけとするDX体験の機会を設けるなど、小中高大学生向けに、教育を通じた将来のDX人材育成の基盤づくりも積極的に進めようとしている。
自動運転のニュースが減少した理由
塩尻市の話を深掘りする前に、まずは世の中における自動運転の現状について、読者の皆さんと情報共有しておきたい。
少し長くなるが、塩尻市の施策の特長を理解していただくため、その前段としてご覧いただきたいと思う。なお、塩尻市では、2022年10月に百瀬敬(ももせたかし)氏が、新市長として就任している。
思い出してみていただきたいのは、コロナ禍になる少し前まで、自動運転についてのニュースがテレビやネットで頻繁に取り上げられていたことだ。
たとえば、海外からはGoogleカーやAppleカーの話題、日本各地での自動運転実証、そしてスバル「アイサイトX」、日産「プロパイロット2.0」、トヨタ「チームメイト/アドバンストドライブ」など、自動車メーカー各社による“ハンズオフ”機能を持つ高度運転支援システムの量産化などがあった。
しかし、コロナ禍となった2020年ごろから、自動運転に関する報道は一気に減っていった印象があるのではないだろうか。それは、なぜなのか。
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