なぜ?塩尻市が「自動運転」で全国から注目のワケ 地域DXのキーポイントとなる仕組み「KADO」

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こうした厳しい現状について国は真摯に受け止め、自動運転実現に向けたロードマップ策定を内閣官房からデジタル庁に移管。そのデジタル庁は、2022年8月1日に「デジタルを活用した交通社会の未来2022」を公表して、社会の実状にあった形の自動運転のあり方を再検証している。

また、経済産業省は2025年までに全国40カ所で、公共交通機関の自動運転レベル4(運転責任を常時、システムが負う)を目指す「RoAD to the L4(レベル4)」実現に動き出し、これまでのさまざまな事案を見つめ直したうえで、自動運転の社会実装のあるべき姿について議論を深めている。

なお、SIPの自動運転関連組織は2022年度で2期、都合9年間の幕を閉じる。2023年度以降のSIPは、自動運転の社会実装も見据えたモビリティに関するデータプラットフォームの議論に移るのだ。

海外の自動運転事情はどうなっているのか?

次に、視点をグローバルに移してみよう。欧米も、自動車メーカーや国の自動運転に対する考え方や市場の状況は、日本と近い印象がある。その中で突出しているのが、アメリカ・カリフォルニア州北部のいわゆるシリコンバレー周辺地域だ。

地元自治体や地元警察とテック系企業との連携が極めて強く、公道で実証が行われていることに加え、一部では自動運転タクシーも実用段階に入っている。ここでの成功事例である、GM(ゼネラルモーターズ)系の自動運転開発部門「GMクルーズ」は、ホンダと連携して日本での事業化に向け、栃木県内のホンダ事業所で研究開発を加速させているところだ。

GMクルーズの自動運転試験車両(筆者撮影)

海外での事例について見方を変えると、レベル4自動運転を実現する社会状況を成立させることは極めて難しいことがわかる。

2010年代、オバマ政権後期のアメリカ各地域や、欧州グリーンディールをきっかけに強烈なBEVシフト施策を打ち出す前の欧州各国では、自動運転の社会実装に向けて活気に溢れていたが、それが遠い昔のように感じられるほどだ。

また、中国の自動運転については、事実上“アンタッチャブル”と表現する日本や欧米の業界関係者が少なくない。

中国の技術革新や単独での規制緩和など、中央政府や地方政府の本音について、うかがいしれない部分が多いからだ。とはいえ、中国における自動運転の実用化に向けた技術進化の度合は、かなり速いと推測される。

自動運転について日本を含めたグローバルの状況を俯瞰すると、実用化に向けた“準備の段階”は過ぎているのだが、少なくとも日本では本格的な実用化に向けた“端境期(はざかいき)”にあると言えるだろう。

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