トヨタ「ヤリス」3年連続販売台数1位に潜む影 充実した車種設定と装備、SUV人気が後押し

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ヤリス
ヤリスの走行イメージ(写真:トヨタ自動車)

その理由を技術者にたずねると、「エンジン再始動での遅れを嫌がるお客様がいる」ということであった。そのうえで、「環境基準は満たしている」との補足もあった。ほかにアイドリングストップは、専用の鉛酸バッテリーが必要で、交換の際に価格が高いという声が市場にもある。

しかし、エンジンの再始動の遅れを嫌がる顧客に対し、対策としてやめるという判断は、メーカーの技術者として残念な決断ではないか。顧客が嫌がらないアイドリングストップに改善、改良していくことこそ、技術者の本分であり、技術者魂が躍動する仕事の仕方ではないのか。

次に、環境基準に適合しているとのことだが、自然災害の甚大化が現実となっている今、国や地域の基準を満たしていればよいということではなく、できることは何でも取り組み、環境保護を進めることが求められているのではないか。

クルマが使われる地域によって、ことに都市部においては、発進と停止の繰り返しが多くなる傾向があり、そこでのアイドリングストップによる二酸化炭素排出量の削減効果はより大きくなるはずだ。さらに都市部では、排出ガスに含まれる有害物質の影響も懸念される。大気汚染防止の観点からも、停車しているときの無駄な排出ガス放出はなくすべきだ。

ナンバーワン車種だからこそ時代を創ってほしい

市場でも声のあがっている、アイドリングストップ用鉛酸バッテリーの価格は、それが現実であっても、環境保全に少しでも貢献することがすべての人々に求められている時代であり、それによってSDGs(持続可能な開発目標)も達成されていくはずだ。HVは高価で手に入れられない消費者も、ヤリスの魅力を味わいたいとガソリンエンジン車を選択することは構わない。しかし、それであるなら、2~3年に1度の交換が想定されるバッテリーの価格くらいは環境への自己負担と考え、貢献することができないのだろうか。

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今、バッテリー代の数万円を節約しても、自然災害を自ら受ければ、そこからの復興に計り知れない費用がかかるだろう。他人ごとではない時代に私たちは生きているのであり、消費者自身はもちろん、メーカーもそこを啓蒙し行動を促すことこそ、業界の盟主であったり、年間販売台数1位のクルマであったりが示すべき姿勢ではないだろうか。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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