トヨタ「ヤリス」3年連続販売台数1位に潜む影 充実した車種設定と装備、SUV人気が後押し

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インテリア
ヤリスのインテリア(写真:トヨタ自動車)

ヤリスに話を戻せば、好調の理由をトヨタ広報は「小型車のメリット(低燃費、とくにハイブリッドモデル、取りまわしのよさ)と、上級車種にも肩を並べる走りの性能や乗り心地を両立させていること。さらに安全性能・機能が充実していること。またスペースの充実したヤリス クロスと、スタイリッシュさにもこだわったハッチバックの双方をラインナップし、お客様のご要望にお応えしていること」などと分析している。

ガソリンエンジン車とハイブリッド車の比率

リアビュー
ヤリスのリアビュー(写真:トヨタ自動車)

そのうえで、販売実績の内訳をさらに見てみると、ハッチバック車は半数以上の55.7%がガソリンエンジン車で、残りがハイブリッド車(HV)となっている。これに対し、ヤリス クロスはガソリン車の比率が26.8%で、HVのほうが70%以上という割合だ。

ヤリスのガソリンエンジン車は、147万~200.8万円の価格帯(いずれも2WD/前輪駆動車)で、HVになると201.3万~235万円の価格帯(同様)となる。HVを選ぼうとすると、ガソリンエンジン車の最上級グレードと同等の値段になってしまう。

インテリア
ヤリス クロスのインテリア(写真:トヨタ自動車)

一方のヤリス クロスは、ガソリンエンジン車が189.6万~233.1万円の価格帯(いずれも2WD/前輪駆動車)で、HVは228.4万~270.5万円となる。ガソリンエンジン車の上級グレードを視野に入れた場合、HVも選択肢として入らなくはないという価格設定だ。ヤリス クロスのように購入車両価格にあまり差がなければ、HVのほうが燃料代でゆくゆくは得することもありえるだろう。

また、市場で見かけるハッチバック車の実態からすると、カーシェアリングやレンタカーでの利用も多く、そうした用途では、ガソリン代などの維持費を抑えられるHVより、車両価格の安いガソリンエンジン車の導入が事業機会を得やすいと考えられる。社用車としての利用においても、価格の安さは生産財としてみた場合に必須の条件だ。その点、HVのみに車種構成を絞ったノートは、価格面で苦戦するのではないかと事前の予測もあったが、ハッチバック車での台数比較でヤリスを上まわったノート人気が浮き彫りにもなってくる。

それでも、トヨタ広報が分析するように、車種の総力戦でヤリス人気を高める手法は、販売のトヨタと評されるゆえんでもあり、じつは2020年から3年連続でヤリスは年間1位を獲得し続けているのである。

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