人の顔色をうかがう「考え方の悪いクセ」の正体 脳は生来、自己を否定するよう設定されている

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「仕事が遅いと思われた」「私は女だから昇進はできない」「あんなふうに怒るのは、私が嫌いだから」と不安が広がり、Fさんは、それが事実だと思い込んでいました。嫌われていると感じている上司と一緒に仕事をしていると、緊張から小さなミスも増えてしまうものです。結果、上司は「Fさんは、仕事ができない人だ」と、実際に思うようになってしまったのです。

こんなマイナスのスパイラルを生み出してしまうのは、大変惜しいことです。Fさんのように、誰かに怒られていると感じている方は、今、脳のクセが発動して「私は怒られた」と思い込んでしまっているかもしれません。そんなときは、「あぁ、また脳のクセが出たな」と、自分を客観的に眺めることで、妄想が暴走するスピードを落とすことができるでしょう。

不安ちゃん
出典:『不安ちゃんの正体』(イラスト:寺崎愛)

仕事が「自分のすべて」になる

この回の最後は、仕事がすべてというワーカーホリックについてです。

仕事の負担が大きくて辞めたい気持ちはあるけれど、「仕事を辞めたら、何をしていいのかわからない」「いまさら経験のない職場で働くと、また一から仕事を覚えなくてはいけない」と不安があって辞められない。あなたは、こんなふうに迷ったことはないでしょうか。

商社勤めのIさんは、自分のプライベートの時間を削って仕事にすべてを費やしてきました。おかげで同期入社の中では誰よりも早く課長職に就き、部下もできました。しかし、一方では仕事自体が自分自身のアイデンティティーになり、つねに仕事のことを考えています。昼夜を問わず働きすぎで、体調も思わしくありません。

こうした状況に陥りやすいのは、自分に自信の持てない方が多いと言えます。どこまでいっても自信が持てず、「ここまでやれば十分だ」という満足感を得られないため、とことん仕事に力を注いでしまうのです。自分の仕事はきちんとこなしたいという責任感が強い、まじめな方でもあります。ですから、仕事を辞めることは、すなわち自分の存在価値がなくなることでもあると考えてしまうのです。

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「私から仕事がなくなったら、私という人間がなくなってしまうのと同じ……」と、不安ちゃんは存在できなくなってしまうことの恐怖をあおってきます。自分の存在を意識すればするほど、存在価値がなくなることが怖くなっていくのです。

不安ちゃんから離れるには、存在の恐怖を自分が作り出していることを改めて考えてみましょう。自分に自信を持てないのは、なぜなのか。どこに不安のスイッチを入れるトリガーがあるのか。不安が生まれる仕組みを理解することが大切です。

あなたの大切な人生です。仕事もプライベートも楽しく過ごせるように変えていきましょう。

岩田 千佳 内科医・心身医学専門医・産業医・nClinic院長

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いわた ちか / Chika Iwata

北海道生まれ。東京女子医科大学卒業後、同大学病院の糖尿病センターに入局。北海道釧路保健所に勤務後、高齢者医療、ホスピスケア、認知症医療にも従事する。医療に携わりながらも現代医療に補完できる“何か”があるように思い、自身も自然食品などで食事にも気を遣い、西洋医療に留まらない全体性を持てる医療を目指している。2019年5月にnClinicを東京の神田神保町に開業。一般内科、ストレスマネージメント、認識のコンサルテーション、生活習慣診断などを行う。現在は、日本心身医学会の専門医として「ストレスと疾患の関係の研究と治療」に携わりながら、「真に健康な状態」とはどのような状態であるかについて研究を行っている。

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