人の顔色をうかがう「考え方の悪いクセ」の正体 脳は生来、自己を否定するよう設定されている

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もともと会議は、さまざまな意見を出し合って議論する場所です。あなたほど真剣に意見を吟味せず、気楽に発言している人もたくさんいるはずです。その人たちの意見は、あなたが自分の中に設けたハードルよりも、本当にまさっているものでしょうか。その思い込みに捉われた方は、次の会議では、少し引いた位置からほかの人の意見を聞いてみてはいかがでしょうか。

あなたが自分に抱いている不信や不安の状況に、ほかの人も陥っていることがあるかもしれません。また、誰かの発言に対するほかの人の反応が、冷ややかなことがあるかもしれません。自分の置かれた環境を冷静に観察することができれば、何か意見をする・しないのどちらを選んだとしても、不安ちゃんのささやき声は小さくなっていくでしょう。

人の顔色をいつもうかがってしまう

仕事の不安ちゃんの矛先は、自分の身のまわり、つまり社内に向けてだけとは限りません。仕事について不安を抱く方は、朝、家を出てから帰宅するまで、自分の全方位に不安の視線や思考を張り巡らせます。営業の仕事をしていれば、「取引先との交渉、うまくいくかな?」「先方の担当者にどう思われているのかな?」と、相手の顔を見ると同時に、反射的に自分の中の不安ちゃんが動き始めます。

実際に、取引先での交渉の段階に入ったとします。交渉の成功、失敗は売り上げに直接関わるので、自分の力にかかってくると思えば思うほど、「絶対に契約を取らなければならない。失敗できない」と、さらに強いプレッシャーを感じ、恐怖すら覚えてしまうのです。これでは、自分の力を十分に発揮しきれません。失敗するほど自信をなくし、不安ちゃんの「思うつぼ」となります。

同時に、社内の上司に対しても同様にプレッシャーを感じるかもしれません。「期待に応えなければいけない。絶対に契約を取らねばならない」「契約が取れなかったら、会社での私のポジションはどうなるだろう」と、不安がどんどん広がっていくのです。

ここで、お気づきの方もいると思いますが、不安ちゃんは、「~しなければならない」という言葉が大好きです。「~ねばならない」「~すべきだ」と、自分をどんどん追い詰めます。果ては、「これもできないの?」と、さらにダメ出しをします。

この状態から抜け出すには、まず「~しなければならない」を課しているのは自分自身だと自覚してください。そう考えてしまっているのは、あなたの「思い込み」なのです。

男女平等と言いつつ、まだまだ職場での男女間の格差はあるように思います。ただ、そのことに過敏になりすぎると、不安ちゃんの増殖を招くことがあります。

「うちの上司は、同期の男子には優しくて、私には冷たい」「上司に、これはどうなっているの? と私だけが怒られた」

私のクリニックの最初の面談でFさんという方が話してくれたことです。

「自分は正当に評価されず、冷遇されている」

しかし、実際に部長がどのように冷たかったのか、上司がどう怒ったのかを伺ってみると、どうやらそれは、Fさんの強い思い込みが、気持ちをそうさせていると感じました。

脳には、初めから自分を否定するように設定するクセがあります。脳はすでに前進モードですから、「今の自分のままでいい」とはしないのです。そのため自己否定をどう自覚するかによりますが、「相手から否定された」という気持ちになるかもしれません。

例えば、「これはどうなっているの?」と言う上司の言葉も、別にFさんを責めていたわけではありません。ただ状況を確認しただけなのですが、自己否定の強いFさんは、それを「怒られた」と捉えてしまいます。Fさんにとっては、上司にものを聞かれることが、怒られたという感覚を引き出すトリガーになっていたのです。

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