1000形で究極の進化形といえるのが、2021年5月に営業運転を開始した1890番台。座席指定列車や貸し切りのイベント列車で運用することを想定して開発した。1800番台同様、中央に貫通扉を設けた4両編成。これまでと一線を画すのが車内設備で、ロングシートとクロスシートのどちらにも変えられる自動回転式の座席「L/C腰掛」を採用した。
電源コンセントの全座席への設置、洋式と男性用の2種類のトイレと、いずれも同社初の仕様を車内に取り入れた。外観は塗装をさらに進化させ、ステンレス車体特有の溶接痕を目立たなくしたほか、妻面までなめらかに仕上げた。朝の有料座席指定列車「モーニング・ウィング号」で2100形8両編成に連結するほか、羽田空港を発着する横浜方面のエアポート急行では別の4両編成の下り方(南側)に連結して運用されている。
一般公募を経て「Le Ciel」(ル・シエル)という愛称を付けたことからみても、京急の期待の高さがうかがえる。2022年には鉄道友の会の「ブルーリボン賞」を受賞した。同会は「チャレンジングな姿勢と堅実性を兼ねそろえたトータルバランスに優れた車両」と選定理由に挙げている。
なぜ「ずっと1000形」なのか
1000形はこれまでに492両が製造された。このうち1137編成8両は事故により2020年3月に廃車となったため、2022年3月時点での在籍は4両編成31本、6両編成24本、8両編成27本の計82本484両。800両近くある京急の車両全体の6割以上を占めていることになる。
なぜ1000形で導入し続けるのか。京急は「相互直通車両の規格で当社が乗り入れできる車両番号(1000番台と600番台)が決まっており、 乗り入れできるよう1000番台を使用している」と説明する。また「当社のイメージ車両として認識していただくため」といった目的もあるという。
京急の運転士経験者にとって1000形はどんな存在なのか。1988年入社で現在は運転課の木村暁生さんは20年前の1000形のデビュー当時を「画期的で運転しやすかった。加速もいいし、ブレーキもいいし、こういう車両ばかりだったら仕事の負担が少なくなると感じた」と語る。その後、さまざまな進化形が登場してくることになるが「子供のころから見てきた初代の1000形も、バリエーションを変えながら長く造っていったので違和感はなかった」。
2022年9月まで運転士だった広報・マーケティング室の翁川浩平さんは、ステンレス車について「初めて見たときは京急車ではないような驚きがあった」と振り返る。乗務員室ドアが大きくなったことで乗降が楽になったほか「高運転台になり運転席からの眺望がよく運転しやすくなった」と説明。雨天などの天候に左右されることなく運転できたという。
京浜急行電鉄「1000形」
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アルミ車の1次車と(左)ステンレス車の19次車
(記者撮影)
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アルミ車(1次車)の前面
(記者撮影)
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丸みを帯びた前面上部。前照灯は両端に配置
(記者撮影)
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下部のライトは外側が急行灯、内側が尾灯
(記者撮影)
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前面ドアには京急電鉄マスコットキャラクターの
「けいきゅん」も(記者撮影)
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けいきゅんと車両番号
(記者撮影)
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京急の顔「けいきゅん」も1000形だ
(記者撮影)
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実はけいきゅん自体も最近マイナーチェンジした。
こちらは2100形の前面(参考、京急電鉄提供)
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新デザインのけいきゅん。これまでとどこが違う?
(参考、京急電鉄提供)
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アルミ車のワイパーカバーには
「1000」のスリット(記者撮影)
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「1」は1次車だけ違いがあるという
(記者撮影)
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横から見たアルミ車の先頭部。乗務員室後方にも
窓がある(記者撮影)
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アルミ車はワイパーカバーが前に突き出している
(記者撮影)
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ドア間にロングシートがある
(記者撮影)
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1000形は3ドア車。先頭車後方の車端部は優先席
(記者撮影)
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1・2両目は優先席のクロスシートが隣り合う
(記者撮影)
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2・3両目は優先席でないクロスシートが隣り合う
(記者撮影)
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側面は上下に赤、窓周りがクリーム色の
デザイン(記者撮影)
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現在の床下機器
(記者撮影)
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こちらはステンレス車(19次車)の前面
(記者撮影)
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ステンレス車にはワイパーカバーがない
(記者撮影)
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前面の「1000」はプリント
(記者撮影)
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19次車の先頭部側面。乗務員室後方に
窓がない(記者撮影)
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ステンレス車(右)のほうが運転台が
高い位置にある(記者撮影)
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19次車(右)はステンレス車だが全面塗装。左のアルミ車
とデザインに統一感がある(記者撮影)
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ステンレス車のドア
(記者撮影)
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アルミ車のドア
(記者撮影)
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ステンレス車の車両番号
(記者撮影)
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アルミ車の車両番号
(記者撮影)
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ステンレス車の全面塗装は関東大手私鉄で初だった
(記者撮影)
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ステンレス車には窓周りがシルバーの「銀千」も。
写真は11次車の1145編成(記者撮影)
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銀千の1145編成
(記者撮影)
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シルバーに輝くステンレスの車体
(記者撮影)
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「KEIKYU」の文字も銀千の特徴
(記者撮影)
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窓周り以外は赤のラッピング。窓下に白帯
(記者撮影)
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最新型のステンレス車1890番台
(記者撮影)
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アルミ車(1次車)の運転席
(記者撮影)
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アルミ車(1次車)の運転台
(記者撮影)
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アルミ車(1次車)の運転台
(記者撮影)
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運転台横の計器類
(記者撮影)
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乗務員室のスイッチ類
(記者撮影)
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乗務員室のスイッチ類
(記者撮影)
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乗務員室のスイッチ類
(記者撮影)
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乗務員室の運転席と反対側
(記者撮影)
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前面扉の裏側
(記者撮影)
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川崎大師のお札
(記者撮影)
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客室側から見た乗務員室
(記者撮影)
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乗務員室後方の2人掛け座席
(記者撮影)
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乗務員室後方の2人掛け座席
(記者撮影)
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乗務員室後方の窓
(記者撮影)
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ドア間はロングシート。車いすスペースも
(記者撮影)
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1次車側面の窓
(記者撮影)
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窓が一部開けられるようになった
(記者撮影)
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ドア部分の床
(記者撮影)
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消火器の収納スペース
(記者撮影)
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消火器の収納スペース
(記者撮影)
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消火器には車両番号と「京浜急行」のステッカー
(記者撮影)
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避難用はしごの収納スペース
(記者撮影)
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非常通報(SOS)ボタン
(記者撮影)
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車端部のドア横スペース
(記者撮影)
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車端部は優先席のクロスシート
(記者撮影)
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補助いすが使える場合も
(記者撮影)
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2両目は1両目側(手前)が優先席
(記者撮影)
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3両目側は優先席でないクロスシート
(記者撮影)
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クロスシートは海外製の座席という
(記者撮影)
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2100形の座席
(記者撮影)
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車端部のクロスシート
(記者撮影)
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ドア上のモニター
(記者撮影)
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ドア上のモニター
(記者撮影)
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ステンレス車(19次車)の運転席
(記者撮影)
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ステンレス車は運転台が高い位置にある
(記者撮影)
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ステンレス車(19次車)の運転台
(記者撮影)
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ステンレス車(19次車)の運転台
(記者撮影)
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運転台横の計器類
(記者撮影)
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運転台横の計器類
(記者撮影)
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乗務員室のスイッチ類
(記者撮影)
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乗務員室のスイッチ類と川崎大師のお札
(記者撮影)
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乗務員室の運転台と反対側
(記者撮影)
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客室側から見た乗務員室
(記者撮影)
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運転席背面に避難はしごの収納スペース
(記者撮影)
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非常通報(SOS)ボタン
(記者撮影)
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1225号車の消火器
(記者撮影)
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車端部は片側のみクロスシート。優先席タイプ
(記者撮影)
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2両目の1両目側は優先席
(記者撮影)
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ドア間のロングシート
(記者撮影)
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ドア間のロングシート
(記者撮影)
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窓はこのように開く
(記者撮影)
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優先席でない車端部
(記者撮影)
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優先席でない車端部
(記者撮影)
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クロスシートには補助いすも
(記者撮影)
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車端部のクロスシートのみ電源コンセントがある
(記者撮影)
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車端部の電源コンセント
(記者撮影)
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先輩車両の600形(左)と1000形アルミ車
(記者撮影)
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19次車(左)と11次車はどちらもステンレス車
(記者撮影)
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アルミ車とステンレス車、バリエーションが豊富な
1000形(記者撮影)
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デビューしてから20年の間、技術やニーズを柔軟に取り入れながら進化してきた1000形だが、2022年度の設備投資計画では車両の新造を盛り込まなかった。京急の一大勢力は1つの節目を迎えたのか。
同社の広報担当者は「2023年以降についても1000形を導入していく」と話している。普段利用する車両がどのグループに属しているのか、乗り比べの楽しみはまだまだ増えそうだ。
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