このままでは、日本はW杯に出られなくなる セルジオ越後に聞く「日本サッカーの問題点」

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――Jリーグのクラブが地域の象徴的な存在になることは、難しいんでしょうか?

今言ったようなことは、宗教や習慣の問題だから簡単にはできないけれど、ほかにも変えられることはいくらでもある。

親会社の顔を伺う社長の上に「地域の名士」会長を

たとえば、Jリーグのクラブの社長の多くは親会社の人事異動でやって来て、3~4年経ったら、また別の人と交代する。親会社に戻る際、それなりのポストに就きたいから、任期の間はつつがなく過ごそうとする。これでは、地域の人たちから愛されるはずがない。

だったら、社長の上に会長のポストを作って地域の名士に就いてもらう。あるいは、FCバルセロナのように候補者を募って選挙するのもいいでしょう。公約を掲げさせて、会員とスポンサーが投票で選ぶんです。

「Jリーグのクラブの社長は親会社の顔をどうしても見てしまう。それでは地域の人に愛されるという図式にはならない」(撮影:今井康一)

これは昔の話なんだけど、僕が慶應義塾大学の藤沢キャンパスで講義を持っていたとき、就職活動中だという学生に、こんな質問をされたことがありました。「セルジオさん、マリノスに就職したくて電話をかけたら、募集していませんって言われました。どうしたらマリノスで働けるんでしょうか」って。

「キミね、まずは頑張って日産に就職しなさい。そうしたら、運が良ければサッカーに回されるかもしれないから」って答えたら、「Jリーグは地域と密着するって言っているのに、言っていることと、やっていることが違いますね」と言う。「まったくその通りだよ。新卒の採用なんてないよ、みんなコネで入るんだから。Jクラブの元社長の息子や娘がサッカー界で働いているの、僕はたくさん知ってるよ」って。

だから、地元出身者や地元の学校を卒業した人ばかりをプロパーとして採用するというのも一案かもしれない。そうしたら、クラブは自然と地域に密着していくんじゃないですか。もっとも、親会社から出向している人がおいしいところを全部持っていくようなら意味がありませんけどね(笑)。

でもね、そもそもの話をすれば、日本にはスポーツ自体がなかったとも言えます。

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