中学受験の成否を分ける「自走できる子」の家庭 親の管理で合格しても子は自己肯定感を持てない
首都圏を中心に20年間家庭教師を続けている長谷川智也さんが、受験のコンサルを含めこれまで訪れた家庭は2500軒を超える。その経験から、受験で成功する子とそうでない子の差は受験までに「自走モード」になれたか、その少しの差という見解に至ったという。
「自走モード」とは、子どもが「自分の受験」として中学受験に向き合う姿勢を表した長谷川さんの造語。子どもを「自走モード」に導くためには何が必要なのだろうか。『予約殺到の東大卒スーパー家庭教師が教える 中学受験自走モードにするために親ができること』も刊行した長谷川さんに、よくある相談に対する回答や親の心構え、合否の受け止め方などについても併せて聞いた。
中学受験が幼児教育化している
我が子が中学受験塾に入ると、偏差値や順位が否応なく目に入るようになる。そこで予想外の偏差値の低さにショックを受ける保護者は少なくない。長谷川智也さんによると、親の悩みの2大パターンは「うちの子は可能性(才能)がないんでしょうか?」と「うちの子は勉強しない。どうしたらいいんでしょうか?」だという。
「それはやってみなければわからないと言うべきでしょう。やるかどうかだけです。才能の有無自体は大きな問題ではありませんと答えます。
他に多いのが、『開成や麻布なら行かせたいけど、無理なら中学受験はやめようかな』という親御さん。僕はその考え方は、子どもに対して失礼だと思います。『無駄な投資はしたくない』という考えが透けて見えるし、いったんは子どもに頑張らせておいて親の希望通りいかないと目標を取り上げるというのはひどいです。
開成や麻布が無理だとしても『最後まで子どもが努力してくれたらいい』と思ってくれていた方が、大学受験までを見据えた長期的視点ではうまくいくと思っています。合否は二の次で、とりあえず開成を目指してみるのもいいでしょう。そこで頑張ってくれる子ならどこかしら受かります」
また、親のタイプによって悩みの傾向が分かれるという。内向的欲求に基づく悩みを持つ親は、 子どもの成績が振るわない場合「志望校に落ちたら子どもが傷つくのではないか」と過剰に心配する傾向がある。
「子どもがつまずかないように石ころを事前に取ってあげる親御さんが多いと思います。しかし、一度挫折してから学んだ方が『できない状態からできるようになった』と子どもが実感でき自信が深まります。親が全部コントロールして難関校に合格しても、子どもは自己肯定感を持てないことが多いんです。
実際に、開成中学に合格した子のコンサルを昨年10件ほど行ったのですが、入学してから宿題すら全くやっていない子が多かった。そういう家庭に共通するのが、お母さんが中学受験の世話を全部やっていたという点です。せっかく合格したのに『俺なんてやってもしょうがない』 と言ったりするので、自分の力で挫折を乗り越えた体験が少ないのだと思います」
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