イギリスも苦慮する「ストーカー規制」の大問題 法律あっても完全に機能しているとは言えない

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2021年6月、南部ダービシャ―に住むグレイシー・スピンクさん(23歳)が元上司マイケル・セラーズに殺害された。同年2月、スピンクさんはセラーズのストーキングについて地元警察に通報していたが、警察はセラーズの行動を止めるところまではいかなかった。

また、殺害の数週間前にはセラーズが誰かに危害を与える目的で集めたと思われる凶器が入った袋を通りがかりの人が殺害現場近くで見つけ、警察に届けていたが、警察はストーキングとは結び付けなかった。犯行後、セラーズの自殺遺体が見つかった。

イギリスの人口の5分の4が住むイングランド・ウェールズ地方で、16歳以上でストーカー行為の被害を受けた人は年間約177万人に上る(2021〜22年度、国家統計局による推定)。

そのうち女性は約117万人、男性は約59万人。年間の被害者総数は人口の3.7%にあたる。ストーカー行為されても警察に通報しない人、支援団体に連絡していない人を含めると、実際にはさらに数字が伸びそうだ。性別・年齢に限らず、誰にでも起き得る出来事となっている。

法律ができても保護令の出動が遅い

イギリスでは、「ストーキングとハラスメント(嫌がらせ)」を「相手を怖がらせる、苦しませる、脅す」行為と定義し、「ハラスメント保護法(1997年)」で禁じている。ストーキングはハラスメントをよりも過激な行為で、対象とする相手に取りつかれている人が「ストーカー」だ。

ストーカー行為の被害に遭った場合、「全国ストーキング・ヘルプライン」に連絡して相談するか、警察に通報し、「ストーキング保護法」(2020年)の適用を求めることができる。

警察は治安判事裁判所を通して対象者への接触禁止令や、該当地域への出入り禁止令を出す。あるいは、ストーカーをアルコール・違法薬物の過剰接種を矯正するプログラムや精神の健康を維持するためのプログラムに送ることもある。

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