イギリスも苦慮する「ストーカー規制」の大問題 法律あっても完全に機能しているとは言えない

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ストーキングを行う加害者を更生することは可能なのだろうか。

イギリスではこの分野についての報道は少ないが、刑務所サービス、およびソーシャルケアを専門とする「シーテック」社が司法省による犯罪再発防止のための新たな試みを2021年6月から開始している。

ストーカー行為をする人の心理

その中の1つが「脅迫行動への介入( Compulsive Obsessive Behaviour Intervention)」プログラムだ。同社の広報資料によると、ストーキングで2回有罪となり、受刑中の男性は「自分の感情を理解できるようになった。怒りがたまらないようにするスキルを身に付けた」と語っている。

「ストーキングを失くするために社会全体が力を合わせるべき」と、冒頭に紹介した、娘を殺害されたヒルズさんはいう。「互いに声をかけてはどうか。ストーカーの友人たちも『常識から外れているよ』と声をかけることはできるだろう。自分の友人の言うことだったら、ストーカーの心に響きやすいのではないか」。

加害者の行動を分析し、治療へのアドバイスを行う「全国ストーキング・クリニック」のフランク・ファーナム博士は、元パートナーにストーカー行為を行う人は「自分の人生がうまく行かないのは相手のせいだ」という強い思い込みを抱いているという(2021年10月24日、ガーディアン紙)。

クリニックでは抗精神病薬の投与や心理療法で妄想を解いていくが、治療には数カ月を要し、成功するかどうかは保証されていない。ストーカー行為に至る前に予防することがカギを握るが、「誰がストーカーになるかは予測できない」ため、「すべての人を治療対象にする必要がある」と述べている。

被害者救済とともに、ストーカー行為を未然に防ぐためにもストーカーの心理の研究や二度と同様の行為に至らないための取り組みがさらに重要視されてもよいだろう。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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