多難のトルコ、「地域の希望の星」ではない 単独で無数の困難に立ち向かうことは無理

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同時に、より安定し、民主的で、欧米風のトルコに欧州が今ほど大きな関心を示したことは過去にない。分散によって安定したエネルギー供給を達成するためにも、EUはトルコとの堅実なパートナーシップを必要としている。

にもかかわらず、EUとトルコは徐々に離れていってしまっている。表現の自由、権力の分立、法治システムはエルドアン首相の下で徐々に侵されてきた。この国はあえて、地域の宗派間紛争に巻き込まれ、ロシアの権威主義的誘惑の声を聴いている。

EUとトルコの関係は最悪

EUとトルコの関係は昨年末に最悪となった。トルコが、自主亡命したイスラム指導者のギュレン氏に近いマスコミに圧力を強めたのだ。この弾圧はEUの激しい批判を引き起こし、エルドアン首相は怒りを込めてそれを退けた。

欧州の一部は、トルコにおける権利と自由の崩壊は深刻であり、EU加盟プロセスは停止すべきだと論じる。確かに、トルコがコペンハーゲン基準を満たすのは難しいだろう。たとえば、トルコは国境なき記者団の世界自由報道ランキングで154位に下落した(180カ国中)。

しかし、加盟交渉の公式停止は、民主化やEUとの協調を追求するようトルコを動かす最後の誘因を失わせるだけだ。

現在に至るまで、キプロスがトルコの加盟の最大の障害となってきた。EU加盟各国はキプロス政府に一層積極的にかかわって必要な変化をもたらすべきである。キプロスほど、トルコの民主主義が安定すれば多くを得られる国はない。

EUの加盟プロセスにとどまらず、信頼を再構築し、具体的利益を双方にもたらす各種の手段が講じられなければならない。テロ対策、シリア難民対策、およびリビアからウクライナまでの複数の危機においてEUとトルコの関係を深めること、関税同盟の合意を改定し近代化すること、そしてビザの自由化を追求することが含まれるべきである。

トルコを取り込むことで、この国が危険な形でわれわれ欧州の共通理念から漂い出るのを防ぐことができるだろう。

週刊東洋経済2015年4月4日号

マルッティ・アハティサーリ 元フィンランド大統領

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元フィンランド大統領。ノーベル平和賞受賞者で、トルコに関する独立委員会のメンバー。

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エンマ・ボニーノ 元イタリア外相

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元イタリア外相。トルコに関する独立委員会のメンバー。

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アルバート・ローハン 元オーストリア外務省事務局長

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元オーストリア外務省事務局長。トルコに関する独立委員会のメンバー。

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