コロナ第8波「死者急増」の真相が映す構造的課題 感染症法の類型や医療・介護制度の弱点が背景に

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もちろん、変異を繰り返す中で初期に比べれば危険性は弱まってきたとはいえ、新型コロナは風邪ではなく、個々人でリスク管理をして対応していくべきものであるが、今回の「コロナ死亡」の増加には、根本的には、感染症法の類型や日本の地域における医療・介護システムの課題が大きく関係している。

超過死亡の詳細な分析が必要

報告された感染者数や死亡者数の推移を見るだけでは、現実に何が起こっているかを知ることは難しい。新型コロナによる社会への影響をきちんと定量化するためには、間接的死因としてのコロナ死亡を含めた「超過死亡」(例年の死亡数をもとに予測される死亡数と実際に観察された死亡数との差)の詳細な分析が必要だ。

つまり、

1) 直接的死因としての新型コロナ感染
2) 基礎疾患を持つ患者の衰弱や増悪による死亡に関係した間接的要因としての新型コロナ感染
3) 行動制限やマスク着用などによる新型コロナ以外の疾患による死亡への影響
4) 医療逼迫によるアクセス制限による死亡への影響
5) 外出制限や経済的困窮などによるメンタルヘルスへの影響

などを包括的に分析する必要がある。

新型コロナ初期には、日本は超過死亡がない、という言説もあったが、野村周平・東京財団政策研究所主席研究員(慶應義塾大学准教授)らは、2021年には超過死亡が増え始めたこと、感染拡大期に医療システムへのアクセスが限定的であったこと、さらには、新型コロナ以外の超過死亡(例えば循環器疾患や老衰による超過死亡)も、2021〜22年には例年より多く発生しているとする検証結果を発表しており、長期的な行動制限による負の影響の可能性も示唆している。

渋谷 健司 東京財団政策研究所 研究主幹

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しぶや けんじ / Kenji Shibuya

東京大学医学部医学科卒、米国ハーバード大学公衆衛生大学院博士課程修了。東京大学大学院医学系研究科教授、英国キングズ・カレッジ・ロンドン教授、WHO事務局長シニアアドバイザーなどを歴任。現在、東京財団政策研究所・研究主幹、福島県相馬市新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター・センター長などを務める。

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