コロナ第8波「死者急増」の真相が映す構造的課題 感染症法の類型や医療・介護制度の弱点が背景に

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WHOの定めた死亡統計では直接的死因が用いられる。基礎疾患(アルツハイマー型認知症など)があり、新型コロナ感染によって衰弱した場合や、基礎疾患が増悪した場合には、新型コロナは間接的死因(直接的死因に寄与する死因)となる。

また、偶発的コロナ感染がスクリーニング検査で発見された症例で、別疾患で死亡した場合も「コロナ死亡」とは分けて評価する必要がある。そのため、特に高齢者の間で、新型コロナに関わる死因が混乱して報告されている。

さらに、間接的死因としてのコロナ死亡に拍車をかけているのが、感染症法における感染症の類型だ。冬に風邪やインフルエンザが介護施設で流行り、入居者が衰弱する場合には、地域の医療機関や介護施設で対応することは可能だ。

しかし、2類に分類されている新型コロナでは、指定病院での治療・入院が求められるために、地域での素早い対応ができない。その結果、救急搬送が増え、ただでさえ人手が足りない指定病院に大きな負荷がかかり、医療者の感染症例も増え、結果として、医療逼迫が続いている。感染症法の改正がなされたばかりだが、類型に関しての議論は放置されたままだ。新型コロナ感染の現状を見据えて、迅速かつ柔軟に変更することが求められる。

間接的死因の死亡者が多く存在する可能性がある

このように、現在の「コロナ死亡」の増加には、ベースに感染者数の激増があるが、直接死因に加えて、間接的死因としてのコロナによる死亡者が多く存在する可能性を理解する必要がある。

致死率が比較的高かった初期の新型コロナによる死亡の状況とはまったく異なるために、闇雲に感染リスクについて煽ったり、以前と同じような行動制限をしたりすることは賢明ではない。集団免疫レベルも十分に高いために、過剰な行動制限は社会経済的な悪影響をもたらしかねない。

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