このような状況を30年前と比較すると、大きな変化があったことが理解できる。アメリカ以外の先進国のGDPはあまり増大していないが、中国はこの30年で大きく成長している。1991年にトップ10に入っている発展途上国は、中国とブラジルだけである。購買力でみればインドとメキシコも入っているが、いずれもその順位は下位だった。
したがって、1991年の世界のGDPの占有率はG7だけで70%となっていた。購買力でみるとそれよりやや少ないが、当時はG7が世界経済を牛耳っていたことは間違いない。
この30年間で発展途上国が経済成長を果たしたことは、ある意味グローバル化によってもたらされたものであった。グローバル化したことで工場の移転が進み、その技術がこれらの国に普及していったことで経済成長が促進されたわけだ。先進国経済にとっては低賃金を求めたがゆえの移転だったのだが、それが結果として移転した国の経済発展を促進したということは皮肉でもある。
「アフリカは西欧から離れつつある」
フランスにドミニク・ド・ヴィルパンという、シラク政権時代の首相だった人物がいる。彼が2003年のイラク戦争の直前、ニューヨークの国連本部でブッシュ政権の国務長官だったパウエルとイラクの大量破壊兵器の問題で議論し合い、一躍時の人となったことは有名だ。彼はイラク戦争において、一貫してアメリカと行動をともにすることを拒否した。その彼が最近、中国やアジアの躍進について興味深いことをインタビューで語っていた。
現在、西欧が陥っているエネルギー危機と世界における地位の低下について、彼は見識ある回答を与えていた。それは、西欧社会は世界がレジームチェンジしていること、もはやこれまでのような西欧のみによる支配ではなくなっていることを認識すべきだ。そして、フランスに近いアフリカが西欧から離れていっていることや中東、インド、中国、ロシア、トルコなどが連携を深めつつあることをフランス政府はもっと認識すべきだ、というものだった。
これは真っ当な指摘だ。最近、EU議会でポーランド代表が「EU議会のエリートは、それぞれの国民の生活の現状を理解していない」と述べていたが、これもド・ヴィルパン氏の発言と同じ脈絡だろう。西欧諸国の大統領や首相に選ばれた者、そして多くの官僚も、いまだに自らを世界の指導者であると自負し、経済、政治あらゆる意味で優位にあるという認識に陥ったままである。まったくの過信だ。
しかし、そんな西欧でも自らの没落を意識する人々が少しずつ増えている。翻って日本ではどうだろうか。アジアでいち早く近代化を進めてアジアの雄となった日本は、今生じつつあるアジアやアフリカの変化を十分認識していないのではないか。
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