これは消費者だけにあてはまるものではない。たとえば、中小企業や伸びているスタートアップは、時間が経つにつれて費用が増えていくので、経営者や創業者が支出や予算について決める際、見るべきなのは、平均ではなく直近の費用だ。
同様に、広告のリターンは、規模が拡大するにつれて逓減するため、マーケッターや起業家がどの戦略に投資すべきか決める際には、最後の1ドルのリターンを比較すべきだ。
平均ではなく最後の1単位を考える
ここでの教訓はこうだ。非営利、営利を問わず、ほぼすべての組織には、限界思考が根づいていない支出項目や生産分野がある。それは全体のなかに埋もれていて、気づかない場合が少なくない。
投資でも生産でも、どこが弱いのかを把握するために、まず注目すべきは、収益性を高める手段がたくさんある場所だ。最後の1ドルの支出の価値を向上させるには、さまざまな方法がある。
ウィスコンシン・チーズマンの限界便益が最大となる手段は生産性だったが、工場全体で生産性に大きなばらつきがあった。工場全体の平均時間ではなく、各ラインが最後のバスケットの生産に要する時間を計測していれば、正確な全体像が把握でき、作業員をどう配置するのがベストか、ヒントが得られただろう。
「限界アプローチで考える」とは、もっと実験する、ということでもある。組織にとって限界利得が最大となる手段を見極めるには、できるだけ多くの手段、そして手段の組み合わせを試してみなければならない。
たとえばチーズマンで事業を拡大し続ける場合、ラインごとに作業員の数にばらつきがあるので生産性の違いを比較すれば、各ラインに何人の作業員を配置すべきかの参考になるだろう。この発見のプロセスは、スケールアップする前も後も有益だが、変化していくスケールアップの途中が特に重要になる。
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