ゲーム依存は生活に支障を及ぼし、心身をむしばむ病気であり、「はまる」というレベルではすまされない。こうした問題にかなり前から注視していた樋口医師が、ネット依存の専門外来をはじめたのは、今から12年ほど前だ。
「現在、当院の専門外来にお見えになるのは、ほぼ100%オンラインのゲーム依存です。以前はRPG(ロールプレイングゲーム)が主でしたが、最近は圧倒的に戦闘型(シューティングゲーム)です。例えば、無人島に戦士が降り立って、お互いに殺し合い、最後に残った人が勝つ。いわゆるバトルロワイヤルゲーム系のゲームに変わってきています」
一方で、「SNSへの依存は少数派」と樋口医師は言う。
最近はライブ配信サイトで、推しバンドや推しメンの配信を見るために学校に行かない、投げ銭で高額を使うなど、生活が乱れて困ると親が連れてくる女子はいる。だが、依存度はゲームのほうが圧倒的に高く、ほぼ男子だという。
ゲーム感覚の延長でネットカジノに
また、最近では違う側面からのゲーム依存のトラブルが発生している。それはゲームのガチャ機能。射幸心をあおるギャンブル性の高さが依存を深刻化させるだけでなく、ゲーム感覚の延長でネットカジノに足を踏み入れ、高額な借金問題にまで発展するケースも増えている。
「一見、気軽なゲームのようにみえるオンラインカジノが違法という事実を大人もわきまえるべき。お子さんが手を出さないよう注意が必要でしょう。親のクレジットカードを罪の意識もなく使い込んでしまうことが実際に起きています」(樋口医師)
では、なぜゲームは依存を招きやすいのか。そこには「のめり込む要素が多彩」と樋口医師は指摘する。それが以下の通りである。
・闘争心があおられる
・課金や長時間プレイで、レベルアップが自己肯定感を左右する
・他人に勝つことで、自己承認欲求が満たされる
・レベルアップで共にプレイする仲間の信頼感や尊敬を得られる
・ガチャのワクワク感
・定期的なイベント
・クリアの先にまた別のゴールが与えられる(エンドレス)
・毎日ログインボーナス
「特にシューティングゲームが依存になりやすい。バーチャル世界なら自分がレベルアップでき、勝ち上がれば仲間に認められ、ヒーローになることもできます。それにより達成感や多幸感が得られ、脳内ではいわゆる快楽ホルモンといわれるドーパミンが分泌されます。それを求めて中毒になっていくのです」(樋口医師)
また、常にアップデートされ、クリアすれば次のミッションが与えられる。飽きることのないエンドレスな仕掛けが用意されていることも、依存しやすい理由に挙げられる。
だが、同じようにゲームをしていても依存になる子とならない子がいる。樋口医師によると、以下の要素があると依存に陥りやすいという。
・男性
・若い(18歳以下)
・リアルな対人関係が苦手
・ゲームがいつでもどこでもできる環境がある
・親子関係が悪い
・両親の仲が悪い(父親と母親の意見が違う)
・リアルなコミュニケーションが苦手
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