賃上げを「安倍政権の圧力」という残念な人々 なぜ17年ぶりの賃金上昇率を評価しないのか

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経済状況が正常な状況で安定すれば人手不足が恒常化するので、企業の経営判断として賃金を引き上げることが合理的な選択となる。政治からの要請でやむを得ず応じたというより、「安倍政権が経済正常化を実現する」という経営者の期待があるからこそ、賃金上昇が起きている面もあるだろう。

賃金上昇率は非正規が正社員よりも高い

すでに、2013年からは外食などで低賃金アルバイトに依存したビジネスモデルが厳しい状況を迎えるなど、労働需給の変化が表れやすい非正規社員において、限界的な賃金上昇が先行して起きていた。そして、この流れに次いで、正社員を含めた賃金上昇が「ベア上昇」という格好であらわれているのである。

なおメディアでは、ベースアップを含め正社員の賃金が上昇する一方で、非正規社員や中小企業との格差という側面を強調する報じられ方もある。

ただ、中小企業においても同様のベア上昇が確認できている。また、実際にはパートなど非正規雇用の賃金上昇が始まるのが早かったし、非正規雇用は賃金水準が低くまた流動性が高いので、今後の賃金上昇率は、正社員よりも高い伸びが続くと思われる。

ベアを含めた正社員の賃金上昇は始まったばかりで、脱デフレはまだ道半ばである。2月9日のコラム「ピケティでアベノミクス批判する残念な人々」でも示したように、まだ脱デフレの途中過程にある中では、「賃金はなかなか上昇しない」と感じる労働者が多数であるし、そうした状況がすぐさま変わることもないだろう。

ただ、それでもわずかに賃金上昇が始まっていることは大きな変化であり、かつインフレの世界が定着すれば、賃金が上昇し続ける世界が、自然の状況と認識する労働者も増えていくとみられる。

日本の経済格差拡大には、デフレが始まってから現役世代で低所得者が増えたことが大きく影響した。今の一種のブーム的な格差問題への注目も、今後収まるのかもしれない。

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