コロナワクチン接種で放置される「副反応疑い死」 救済制度が機能しないため国民は泣き寝入り

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ところが、問い合わせた自治体の職員が制度を理解しておらず、医師向けの副反応疑い報告の書類を送ってくる。ここでボタンの掛け違えが起きた。大田さんは語る。

「届いた書類をワクチン接種担当の医師に渡し、副反応疑い報告を出してもらいました。でも、因果関係は評価不能でおしまい。その後、知人に教えられ、救済制度の申請を考えたのですが、必要な書類集めで立ち往生しました。遺体の病理解剖をしなかったので、因果関係を証明する書類がないのです。医師も警察も解剖の必要性を言ってくれなかった。悔いが残ります」

副反応疑い死1921件のうち、病理解剖されたのは1割程度にとどまる。救済制度を公務員が知らなければ意味がない。そもそも病理解剖の少ない日本で死因の特定は難しい。

それでも厚労省は申請に必要な書類として「診療録等」を求め、ホームページ上で「予防接種を受けたことにより死亡したことを証明することができる医師の作成した診療録(サマリー、検査結果報告、写真等)含む」と説明している。これを読むと接種と死亡の因果関係を証明したカルテ、あるいは病理解剖による検査結果や写真が必要だと受け取れる。

だが、接種後の突然死では、治療目的の診療を受けていないため医師の診療録がない。病理解剖の件数も極めて少ない。厚労省は「迅速に幅広く」救うといいながら、因果関係の証明を当事者に課して申請件数を絞っているのではないか、と勘ぐりたくもなる。

弁護士は「厳密な証明がなくても諦めずに相談を」

立ちふさがる因果関係の壁をどうとらえればいいのか。新型コロナワクチン被害救済事例検討会の代表で弁護士の升味佐江子氏は、次のように指摘する。

「接種と死亡の医学的な因果関係を証明することは、専門医でもとても難しいのです。これを求めたら、救済される人は極端に少なくなる。それでは、簡易迅速にとりあえずは被害者を救済しようという制度の目的は果たせません。そこで厚労省は救済制度の認定に当たって〈厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とする〉という方針を明言しています。救済制度で支払われる補償金の額は、年齢や収入の違いを問題にせず、どんな被害者に対しても同じです。大まかにいえば、予防接種という国が行う制度によってたまたま犠牲になった人が出たら、その全員に最低限の補償をしようというものなのです」

だから、救済制度では、医師の過失による死亡医療事故の損害賠償を求める訴訟のときのように、何が過失かを遺族側が明らかにして、その過失と死亡の間に「高度の蓋然性がある」ことを証明せよという厳密さまでは求められていないわけだ。

「賠償とは違って、補償ですから高度の蓋然性があるというレベルまでの厳密な因果関係を証明できなくても認められることがあります。ここがミソです。副反応が疑われる死亡事例では、ご遺族は、尻込みせず、諦めず、市町村の窓口に率直に相談されたほうがいいでしょう。補償金を受け取った後でも、接種時の過失などを取り上げて補償では支払われない部分の損害賠償請求する権利が失われるわけではないので、まずは救済制度での補償請求をすることをお勧めします」と升味弁護士は言う。

遺族は、まずは自治体への補償申請に踏み出したほうがいいだろう。補償の申請を受け取った自治体は、「予防接種健康被害調査委員会」を開き、それぞれの事例を医学的見地から調査・審議する。調査委員会が申請者に与える影響は大きい。調査委員会で、どのような追加資料が必要か、何が足りないか審議され、その内容が申請者に伝えられて資料集めが行われる。当初、申請者がどんなデータを出しても資料不足とはねつけていた調査委員会が、大学病院の病理検査報告が追加されたとたん態度を一変。「因果関係が推測できる」と結論を出し、国に申請を送った事例もある。

確率は低いとはいえ、副反応疑い死は実際に発生している。遺族にとって、接種後の家族の死は100パーセント現実だ。救済はワクチンを推奨する国の責務であろう。

山岡 淳一郎 ノンフィクション作家

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やまおか じゅんいちろう / Junichiro Yamaoka

1959年愛媛県生まれ。一般社団法人デモクラシータイムス同人。出版関連会社、ライター集団を経て独立。「人と時代」「公と私」を共通テーマとして、近現代史、政治、経済、医療、建築など分野を超えて執筆。時事番組の司会、コメンテーターも務める。著書に、『ゴッドドクター 徳田虎雄』『後藤新平 日本の羅針盤となった男』『田中角栄の資源戦争』『コロナ戦記 医療現場と政治の700日』『医療のこと、もっと知ってほしい』『生きのびるマンション  ふたつの老いをこえて』『気骨 経営者 土光敏夫の闘い』『ボクサー回流』『マリオネット』『原発と権力』『インフラの呪縛』『ドキュメント 感染症利権』など。最新刊に『ルポ 副反応疑い死』。

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