アメリカでマスク着用が再び勧告され始めた理由 「トリプルデミック」で医療逼迫が近づく

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ニューヨーク市やロサンゼルス郡を含むいくつかの都市や郡で、屋内公共空間でのマスク着用がまたもや勧告されるようになっている(写真:John Taggart/The New York Times)

マスク着用勧告が戻ってきた。今回は新型コロナウイルス感染症対策のためだけではない。新型コロナ、インフルエンザ、呼吸器疾患を引き起こすRSウイルスの3つが同時流行する「トリプルデミック」がアメリカ各地に広がったことで、ニューヨーク市やロサンゼルス郡を含むいくつかの都市や郡で、屋内公共空間でのマスク着用がまたもや勧告されるようになっている。

新型コロナの感染者数は2週間で6割増

アメリカ全体では、新型コロナの感染者数と入院者数が過去2週間で急増。増加率はそれぞれ56%と24%増となっている。流行期に入ったインフルの感染者数はすでに1300万人に達し、7300人の死者が出ているとアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は推計。

感染者数と死者数は今後数カ月でさらに増加する見通しだ(インフルによる毎年の死者数は過去10年、1万2000人から5万2000人の間で推移。1月と2月がピークとなっている)。RSウイルスの流行はここにきて落ち着きを見せているものの、感染が高止まりしている地域が多い。

CDCは、入院者数や空き病床数といった新型コロナ感染状況を郡レベルで見極め、マスク着用を公式に勧告するかどうかを決めている。だが、ロシェル・ワレンスキー所長は最近行われた公共ラジオNPRのインタビューで、「もちろん、マスクを着けるのにCDCの勧告を待つ必要はない」と述べた。

新型コロナ、インフル、RSウイルスの感染者数は「地域によって多かったり若干少なかったりするが、現実にはアメリカ全体が影響を受けている」と、バンダービルト大学医学部のウィリアム・シャフナー教授(予防医学)は話す。

そのため、重症化リスクの高い人と暮らしている場合には公共の場所で「再びマスクを着ける」ことが非常に重要だと教授は力説する。重症化リスクの高い人には、65歳以上の人、妊婦、心臓病や糖尿病、肺の病気といった基礎疾患のある人、免疫機能が低下している人が含まれる。

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