サービス停止「ねこホーダイ」が見落とした大問題 SNSなどで批判の声、背景に「保護猫活動」の限界

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その理由は引き取られる猫の個体数が多いことです。そのなかでも幼齢の子猫の殺処分率が全体の66%と高く、離乳前の子猫の譲渡の難しさが関連しています。

無責任な餌やりにより栄養状態の良い野良猫が頻繁に繁殖する、また飼い主が不妊手術を怠り繁殖するなどで、それらの子猫が持ち込まれることが主な要因です。

また近年は、「世話ができなくなった」という高齢者による持ち込みも増えています。多頭飼育崩壊になるケースが目立ち、この場合は一度に多くの猫を保護する必要があるため、収容スペース不足が要因で殺処分になることも増えています。それ以外にも、飼い主が亡くなり、その家族が「飼い続けるのは難しい」と持ち込むケースもあります。

保護された猫や犬を殺処分から救うために、動物愛護団体や個人のボランティアが必死に自治体の保護施設から引き取っています。「殺処分ゼロ」達成のために、提携する動物愛護団体にすべて引き渡している自治体もあるようです。引き取ってもまた収容される。まさに「いたちごっこ」の状態なのです。

多頭飼育崩壊や虐待による保護、自治体からの引き取り、野良猫や野犬の保護などで、すでに多くの動物愛護団体がキャパシティを超えた状態にあります。しかも、ここ数年は法改正に伴う基準省令による数値規制が影響し、繁殖を引退した猫や犬が動物愛護団体などに保護されることも多く、さらに逼迫した状況になっているのです。

本来なら、業者(第一種動物取扱業者)自身が責任を持って猫や犬の譲渡先を探すのが筋です。まれに業者の関係者が動物愛護団体を設立して譲渡しているケースもありますが、動物愛護団体に責任を負わすのは本末転倒な行為だと考えます。

今年6月からは動物愛護団体などが届け出する第二種動物取扱業者(非営利)の数値規制が段階的に始まります。2025年6月に完全施行となり、状況によっては、保護施設の改装やスタッフの増員が必要になります。それができない場合には収容数を減らさざるをえず、新しい飼い主を早急に探さなければなりません。

寄付だけでは運営の継続は困難

筆者は、保護ハウス「さかがみ家」を立ち上げた俳優の坂上忍さんを取材した際に、「寄付を募れば多少のお金は集まるが、それには波がある。自立運営という発想を持って行動していかなければ保護施設の継続は難しい」という話を聞きました。

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多くの保護施設は「寄付」「クラウドファンディング」「ボランティア」で運営され、寄付では資金が足りず、個人の貯金を切り崩したり、アルバイトをして得たお金を投入していたりということも耳にします。ボランティア頼りのため、慢性的な人手不足にもなっています。

その状態が長く続けば飼育環境が悪化するだけでなく、保護した猫や犬の健康も害することになります。世話をする人が疲弊し、保護施設自体が多頭飼育崩壊するケースも出てきています。猫や犬の命をつなぐためには、安定した保護施設の継続が必須です。そのためには波のある寄付に頼るのではなく、自立運営を模索し行動する必要があるのです。

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