台湾政治の次世代リーダーが語る「中国と日本」 民進党副秘書長・元学生運動リーダーの林飛帆氏インタビュー
例えば、中国統一という意見に近いメディアが発信するニュースに大量のクリックを行うことでニュース自体の影響力を高める。そうすれば、より多くの読者の目に触れることになり、拡散もされやすくなる。
中国は台湾と同じ言語を使用するのでVPN(仮想専用通信網、Virtual Private Network)を使用して台湾のネット環境に侵入し、ロジックを操作する。ソウルと台湾の一般人に紛れてより簡単に操作できるようになります。
ーーそういった行為には台湾内でも協力者がいますね。取り締まることはできないのでしょうか。
世間にあふれているフェイクニュースの操作をみると、司法の壁はとても高い。摘発しても検察は不起訴にすることが多いのです。どの法律で起訴するかにもよりますが、仮に社会秩序を騒がした罪に問おうとすれば、ほとんどが裁判の段階で無実になります。誰が支持して、何をしたのかといったことを明確に証明しなければならず、これを証明する証拠を完璧にそろえるのは至難の業なのです。
ーー2014年のひまわり学生運動のとき、占拠した立法院から退去するかどうかを、当時そこにいた学生1人ひとりの意見を聞き、決断を下しました。さらに立法院の外にも意見を聞いて討論し、共通認識を形成しようとしていた。その姿に民主主義の実践をみて、日本ではあなたの行動を高く評価する人は少なくありませんでした。現在、民進党という政党、しかも副秘書長というポストに就き、あなたが考える民主主義は実践できているとお考えですか。
私が民進党に入党して最も慣れなければならなかったのは、実はこの部分です。社会で、あるいは学生運動を行っていた時は気軽に人々と対話しながら物事を進めればよかった。林飛帆という名前をもって、直接対話すればよかったのです。
ところが入党後、自分の立ち位置は一個人で終わることはありません。基本的に、自分の意見を直接表明するようなことはなくなりました。先ほど述べたように、副秘書長という立場は幕僚のような立場にあるためです。
民進党の世代交代は始まっている
個人的な知名度や人々が私に抱くイメージがあるのは事実です。とはいえ、重大な取り決めについては、多少は個人的な意見を述べることは許されていますが、党というシステムの中にいて、党主席の幕僚という立場にいることは間違いありません。そうした立場に慣れるには、実は結構な時間がかかりました。
2022年には民間のさまざまな団体が政府の打ち出した意見と合わないことがありました。例えば、サンゴとは違う植物が形成する岩礁の保護問題など環境関連の問題で相違が出たことがありました。
私のような社会運動の経験がある者が、往々にしてこうした交渉の場に駆り出され、相手と対話をすることがあります。これまでそういった民間と政府とのパイプ役を果たしていました。また香港の中国化といった問題では、香港から台湾に来た人たちに人道的なサポートを行えるシステム構築で窓口となり、民間団体などとも対話をしていました。
ーー民進党は今、ベテランの政治家の層と若い世代の考えにギャップがあるとの指摘があります。民進党内の世代交代はどうなりそうですか。
すでに中堅世代がベテラン世代のバトンを引き継いでいると感じています。世代交代はすでに始まっているのです。
例えば今回の統一地方選での民進党の立候補者をみると、初出馬となる新人が多かった。新型コロナウイルス感染症対策を前面に指揮し、台北市長選に立候補した陳時中氏(1953年生まれ、落選)は年齢的に少し高いが、それでも初出馬の新人です。
桃園市長選に立候補した鄭運鵬氏(1973年生まれ、落選)は中堅世代といえるし、台中市長選での蔡其昌氏(1969年生まれ、落選)も中堅世代であり、1990年の「野百合学生運動」の世代です。
同じ野百合学生運動世代で前の桃園市長の鄭文燦氏(1967年生まれ)も今後、民進党でより重要なポストを担うと注目されています。
*インタビューは2022年12月30日、台北市の民進党本部で行われた。2023年1月上旬、林氏は同月15日以降に副秘書長を辞任し民進党を離れるという観測が出ている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら