台湾政治の次世代リーダーが語る「中国と日本」 民進党副秘書長・元学生運動リーダーの林飛帆氏インタビュー

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ーー台湾有事が日本でもホットイシューになっており、「台湾有事は日本有事」と言われています。

日本とは安全保障分野ですでに話し合いを続けてきました。とくに2022年8月に中国側が台湾を狙って軍事演習を行いましたが、これにより台湾と日本は緊密に連携しなければならないと感じたことと思います。

台湾の防衛体制において、日米両大国との密接な連携はもちろんあります。台湾の国防部(省)や国防研究院を中心に、日米との連携や重要性や協力方法を最も理解していると思います。

ーー日本との軍事面での協力・協調とは具体的にどのようなことを想定していますか。

それは私の立場からは言えません。

ーー林副秘書長は日本についてどのような考え、印象がありますか。あなたは日本では台湾を代表する人物の1人です。

私の日本への印象にはとてもいいものがあります。例えば祖父母は日本語と台湾語を話す、いわゆる「日本語世代」です。私たちと彼らはまったく違う生活体験をしています。

もちろん私たちの世代は、日本語世代のような環境で育ったわけではありません。しかし、2011年の東日本大震災以降、民間レベルでの日台交流がとても活発に動いています。文化面ではもともと活発でしたが、震災以降は双方の社会がより強い絆で結ばれるようになったと思います。

例えば震災を受けて台湾人が日本に手を差し伸べれば、台湾で何か起きたときに日本人が何かをしてくれる。例えば2021年のコロナ禍の中で、日本は台湾に大量のワクチンを届けてくれた。これにはネット上でもSNSなどで日本に対するさまざまな感謝の声であふれていました。本当に感謝に堪えません。

実は、1月下旬の旧正月期間中、私は日本に行く予定です。

副秘書長は参謀役、党主席を支える

ーー現在の「副秘書長」の肩書を持って、具体的にどのような仕事をしていますか。

副秘書長とは、いわば民進党内の幕僚、参謀と考えていただいていいかもしれません。今は前述した地方選の結果レビューが一段落し、1月15日には民進党の党主席選挙があり、そのための作業を行っています。

主席選挙には現在1人、賴清徳・副総統しか立候補していませんが、15日に当選が決まれば1月18日に就任します。それから台湾は旧正月の連休に入りますが、主席選挙後には新体制で人事などのさまざまな手続き、作業が待っています。そうした党内の人事調整など、主席のサポートを行います。

ーーあなたは台湾では国民党など野党から、また中国からも時に批判を受けています。その中にはさまざまな情報が飛び交っており、熾烈な情報戦が行われています。

2022年の地方選の期間中、中国は過去とは違い、中国発のフェイクニュースは少ないと感じました。しかし、彼らがとった方法は、2つの異なる意見を極端化するようなものでした。これは選挙後に気づいたことなのですが。

「緑陣営」(民進党や台湾独立派、本土派)の声を極端な方向、つまり「台湾は絶対に独立する」といった方向に誘導し、「青陣営」(国民党や中国との統一派)の声は「絶対統一」という両極端に誘導していたということです。これは台湾資訊環境研究センター(IORG)といった情報戦対策を担っている部署で、これらの分析をまとめています。

ネットからニュースのプラットフォームで、中国はどうやって情報を拡散していったのか。簡潔なタイトルやクリック数を捜査して、すなわち台湾のメディアのあるニュースを大量のクリック数を用いてページビューを稼ぎ、検索画面の上位に来るような操作です。

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