株価急落で多額の「不足金」が発生、ネット証券に打撃【震災関連速報】
東日本大震災を発端にした株価急落の影響で、大手ネット証券が相次ぎ期末に数十億円規模の損失を計上する見通しだ。一部の投資家がオプション取引と呼ばれるデリバティブ(金融派生商品)で多額の損失を出し、決済資金が不足するのが主な原因だ。
日経平均株価は震災の影響に伴う日本経済の打撃に加え、東京電力の福島第1発電所をめぐる事故に伴う混乱で、週明け14~15日で1600円以上も急落する事態となった。
この局面で、ネット証券各社は「日経225オプション取引で多額の追い証が発生し、それに伴い不足金が生じた」と説明する。松井証券は現時点で35億円の不足金が生じたと発表。マネックス証券も約13億円、カブドットコム証券も約39億円の不足金が発生している。
オプション取引とは、特定の金融商品を決められた期日に決められた価格で売り渡す「権利」を売買するもの。買う権利を「コール」、売る権利を「プット」といい、それぞれに売り手と買い手がいる。日経225オプションのプットの場合、日経平均の上昇が見込まれれば、顧客は現時点より高い将来の「行使価格」を見込んで、プットを売買する。そのため株価が急落すれば、買い手は時価より高い行使価格で売却できるため利益を得て、売り手は逆に損失を被ることになる。
今回は地震発生後の日経平均の8000円台への急落に伴い、主に日経225オプション取引のプットの売り手に巨額の含み損が発生した。ネット証券ではこうした含み損が発生した場合、顧客に「追い証」と呼ばれる追加の差し入れ金の払い込みを求める。しかし、「期日までに追い証が払い込まれない場合は、強制的にプットを買い戻し、足りなかった金額が不足金として発生する」(マネックス証券)。
不足金は現時点での金額であり、今後、顧客からの回収が進めば減少する可能性もある。ただし、不足金の発生は証券各社に重荷となっており、ひまわり証券は日経225先物・オプション取引を含む証券事業からの撤退を表明した。ネット証券最大手のSBI証券は現時点で発表はしていないが、「金額は比較的少ないが損失は発生している」としており、トレイダーズ証券も先物・オプション取引の新規注文の受け付けを停止している。各社は期末に不足金残高に相当する貸倒引当金の繰入損を計上する見通し。
地震の被害は株価急落を通じて、ネット証券にも押し寄せた格好だ。
(許斐 健太=東洋経済オンライン)
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