配信と放送を問わず、国内の有料動画配信サービス市場の限界点はおおむね500万ユーザーという「見えない壁」がある。有料動画配信サービスでは、2021年時点でNetflixが頭1つ飛び抜け600万の契約者数を達成したが、次いでHuluが280万と推計され、U-NEXTが239万と報告されている。
有料放送サービスではスカパーJSATが297万、WOWOWは259万の契約数を有している(2022年7月時点)。ちなみに過去最大の会員数を抱えていた時期は、スカパーJSATで2012年の383万、WOWOWは2018年の291万であった。「500万の壁」を超えることができずに近年の顧客基盤は縮小傾向にある。
無料動画配信も「見えない壁」に到達
有料放送サービスの利用が縮小した背景には、有料動画配信サービスの利用拡大がある。双方の利用者の重複関係を分析した調査では、2017〜2018年時点では「重複者」が「配信サービスのみ利用者」を上回っていたが、2019年時点では「配信サービスのみ利用者」が上回った。
配信サービスの萌芽期は配信と放送の両方を契約していたユーザーが、配信サービスの種類やコンテンツの充実が加速したこの時期に放送サービスの利用を停止したと推察されている。この背景にはYouTubeなどの無料動画配信サービスの利用拡大があり、無料動画配信サービス視聴者の増大が、有料動画配信サービス視聴者の増加を牽引したのではないかとされている。
ただし、無料ユーザーが有料ユーザー化する誘因は不明確で、無料コンテンツがさらに充実してきていることから、むしろ今後は有料ユーザー化する積極的要因は見いだしにくいとも考察されている。
一方の無料動画配信サービスでは、近年の最大の数字を取ると「TVer」で1700万(MAU:月あたりのアクティブユーザー数)、「ABEMA」で1825万(WAU:週あたりのアクティブユーザー数)となっている。
日本の世帯数が約5000万、テレビ放送の視聴率が30%を叩き出していた時代で1500万がほぼ放送コンテンツのリーチの上限と考えられている中で、無料動画配信サービスも「見えない壁」に到達しており、ここからさらに大きく成長するには「新しい一手」が必要になってくるのではないだろうか。
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