日本で働くフィリピン人女性「幸せを感じる瞬間」 高級レストランやブランド服より大切なもの

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「みなさん、月にいくら送金するんですか?」と聞くと、「10万円以上」「15万円くらい」「多い月は20万円」なんて答えが聞かれた。東京に住んで、それだけの額を送金するためには相当切り詰めなければならないはずだ。ロウェナさんは柔らかい表情で言った。「高級レストランで食べたり、ブランドの服を着たりする人を羨ましいとは思わない。自分はそういうことしなくてもうれしいの。家族が大好きだから」。

子どもの世話を親きょうだいに託して再来日

来日して4年目、ロウェナさんはスナックのお客さんだった日本人男性と結婚し、妊娠する。でも臨月の頃には夫婦の仲は冷えてしまい、結局数年後に離婚した。「夫は優しい人でした。ほら、なんて言う? 縁がなかった? それです」。

フィリピンに里帰りして息子を出産した。産後半年経つと、子どもの世話を親きょうだいに託して再来日した。「そこからが新しい闘いでしたね」。

えっ、赤ちゃんとは離れ離れなのか。わたしは驚きを隠しながら、そっとロウェナさんの顔を見る。

「子どもと一緒にフィリピンにいてもいい生活ができない。それなら日本で働いたほうがいい。もともと家族を助けるのが夢だから。さびしいとの闘い。さびしいときは家族に会いたい。涙と鼻水と混ぜたりして、よく泣いたね。大泣きして、そのあと、よしやるぞって。その繰り返し」

ロウェナさんは朗らかに話しているのに、となりで聞いていたお仲間がもらい泣き。ロウェナさんが「やーだ、泣いちゃだめだよう」と言うと、「泣かせないでよう」と言い返して、一同アハハ。ロウェナさんと同じ時期にフィリピンから来た女性は、みんな似たような経験をしているらしい。子どもと離れてお金を稼ぐ。当時はそれが出稼ぎ女性の生き方だったのだ。

まだインターネットはなくて、国際電話は高額だった。遠くにいる家族をつなぐ手段は郵便一択。カセットテープに家族の声を吹き込んで、それを郵便で送ってもらった、というエピソードがいかにも80年代だ。

「フィリピンからテープが届くと、ほんっとにうれしかった」とロウェナさん。幼い声をテープに吹き込んだ息子さんは、現在フィリピンで小さなお店を営んでいる。音楽好きで、ラッパーでもある。「もう孫もいるの。とにかく息子がいい人間に育ってくれたのが一番の誇り」。

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