日本で働くフィリピン人女性「幸せを感じる瞬間」 高級レストランやブランド服より大切なもの

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日本は移民が少ない国だと言われるが、東京にはさまざまな国や地域から来た人が暮らしている(イラスト:金井 真紀)
日本は移民が極端に少ない国だと言われるが、特に東京には実にさまざまな国や地域から来た人が暮らしている。とはいえ、友人にでもならないかぎり、こうした人たちがなぜ日本にやってきて、何をしているのかを知る機会はなかなかない。
ホテルで働くフィリピン人の長谷川ロウェナさんは同じフィリピン人の仲間を束ねる労働組合の分会長をしているが、ここへ来るまでの道のりは平坦ではなかった。本稿では、日本に住む18組20人の外国人に、文筆家でイラストレーターの金井真紀氏が話を聞いて絵と文にまとめた『日本に住んでる世界のひと』より、ロウェナさんのストーリーを紹介する。

50人のフィリピン人労働者のトップに

春まだ浅く、朝の空気は冷え冷え。線路脇の道、その一角にフィリピン人が集まってくる。男女あわせて7、8人。

「おはよー」「晴れてよかったね」「眠いー」
日本語とタガログ語がにぎやかに飛び交う。誰かが冗談を言うと、別の人がそれを受けて、わっと笑い声が上がる。楽しそう。まるで遠足にでも行くみたい。

やがて時間が来ると、フィリピン人たちは労働組合の幟(のぼり)を掲げ、お揃いの腕章をつけて、線路の反対側に広がるラブホテル街へと足を踏み入れた。彼らはこの地で長くホテル清掃の仕事をしてきた。しかし新型コロナウイルス感染拡大を言い訳に、経営者が従業員に対して不当な扱いをするようになった。

「私たちがガイジンだからバカにしてる」。うんざりした顔でひとりが言うと、みんなもうんうん、とうなずく。彼らは専門家に相談した上で労働組合をつくり、経営側と闘うことにしたのだった。労組には50人以上のフィリピン人が加わった。そのリーダーを務めるのが長谷川ロウェナさん。小柄で丸顔、柔らかい雰囲気で「闘う組合分会長」の雰囲気とはほど遠い。だけど話を聞くと彼女のすごさがよくわかった。

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