第2段階として、クルマからの注意喚起や警報を受けドライバーがステアリングで回避操作を行った場合には、クルマがステアリングを切る側の安全を車載センサーで確認しつつ、回避スペースがあるとシステムが判断すると、最大限、安全に回避できるように車両挙動安定装置であるVSAを活用した車両制御で、人の運転操作(ステアリング操作やブレーキ操作)を強力にアシストする(前述のB)。
仮に、回避動作を行うべき緊迫した状況で、びっくりしてドライバーの身体が硬直してしまい回避動作を行わなかった場合には、同一車線内で回避できるスペースがあるとシステムが判断した場合に限り、ブレーキ操作とステアリング操作を自動介入させて事故を抑制する(前述のC)。
注目すべきは、人の状態をシステムが常に見守りながら、自車周辺の外界状況に応じたインタラクションを行っていること、そして人の回避動作をきっかけにしてクルマが車両制御を行うことにある。これこそ、人とクルマの協調運転により交通事故を抑制するゆえんだ。
さらに、こうした車両制御はHonda SENSING Eliteの自動化レベル3技術で培ったプロセスそのもので、ホンダは各地域の状況に合わせて2024年から実装を開始する。
2030年交通事故者数半減⇒2050年ゼロの目標
ホンダは2030年までにホンダの2輪車/4輪車が関係する交通事故死者の半減(2020年比)を目指している。2022年12月時点での目標は、2輪検知機能付Honda SENSINGの全世界の4輪全機種への適用と、先進国におけるHonda SENSING 360の4輪全機種への適用だ。
そして実装率の高まりを追い風として、2050年までに交通事故死者ゼロを目指す。この最終目標は、現存する2輪/4輪のホンダ車、そして歩行者までを含んでいる。客観的に見て、実に壮大な計画といえる。
昨今、「自動運転の技術開発は踊り場にきたのではないか」といった趣旨の意見を聞く。さらに、「ホンダの自動化レベル3技術といっても、レジェンドを100台、しかも法人リースしただけでは意味がない」という声も自動車業界ではささやかれる。確かに日本に現存する8000万台にもなる車両台数からすれば100台の効果は限りなくゼロに近い。
ただ、本稿の⑤回避支援はまさしくレベル3技術の応用だから、それなくして人とクルマの協調運転はありえない。レベル3技術にはドライバーモニタリング機構が国際基準のうえで不可欠であり、システム運用には高い冗長性が求められるからだ。レベル3技術を確立させたホンダだからこそ、直近である2024年に人とクルマの協調運転が実現できる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら