見た目の違いはわずかだが、走りはすべてが新しい、いや劇変した。それが今年10月にマイナーチェンジ(一部改良)された新しいホンダ「フィット」の全貌である。
マイナーチェンジの内容は多岐にわたる。内外装の変更やグレード追加&整理に加えて、動力性能も格段に向上させた。歴代フィットのスポーツモデルである「RS」グレードをガソリン/e:HEVの両方に新設定したこともトピックだ。
2020年に登場した現行の4代目フィットは、直列4気筒1.3Lと同1.5L「e:HEV」(シリーズハイブリッド)の2本立てで、標準ボディ4グレードに、車高をアップさせた1グレード(CROSSTAR)の構成だった。シンプルで飽きのこない内外デザインは支持を受けたが、パワートレーンは幾分おとなしく評価が分かれた。
ホンダではシリーズ式ハイブリッドを「i-MMD」の名称でミディアムセダン「アコード」(2013年)から搭載を開始した。直列4気筒2.0Lエンジンとの組み合わせで、高い走行性能と優れた燃費数値が評価された。それをフィットでは1.5Lへとエンジンをダウンサイジングさせながら、i-MMDからe:HEVに名称を改めた。
e:HEVの課題だった走行性能を向上
実力派i-MMDの進化版がe:HEVだから期待値は高かった。しかし、フィットe:HEVは燃費数値こそ良かったものの、走行性能はそれほど高い評価を得なかった。
日産自動車の同じくシリーズ式ハイブリッドである「e-POWER」はパワフルな走りで定評がある。フィットの競合車である「ノート」では直列3気筒1.2Lを発電用エンジンとして搭載する。一方、フィットe:HEVは直列4気筒1.5Lと排気量に余裕があるにもかかわらず加速性能は劣る。
具体的には、滑らかで上質なe:HEVながら、2次バッテリーを安全方向(≒ゆとりをもたせた充放電制御)に振ったことで、電動モーター特有のグッと身体に響く走行感覚が薄かったのだ。
今回のマイナーチェンジでは、そこに改良を加えた。部品レベルのハードウェア分野から、制御関連のソフトウェア分野に至るじつに大がかりなものだ。
まず、ハード分野の要である発電用エンジン(直列4気筒1.5L)のスペックを従来の98PS/127N・mから106PS/127N・mへと向上させた。シリーズ式ハイブリッドでのエンジン性能向上は、そのまま発電能力の向上を意味する。
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