「知床観光船事故」報告に思う「国の調査」の不条理 2008年犬吠埼沖の漁船沈没事故との大きな「格差」
国交相は旅客船のハッチの点検などを指示
「経過報告においては、浸水から沈没に至るメカニズムの分析等が示されるとともに、私(国土交通大臣)に対して、早急に講じるべき施策が示されました」
斉藤鉄夫・国土交通相は知床観光船に関する経過報告が公表された翌日の12月16日、定例の記者会見でこう述べ、直ちに対策を講じたことを明らかにした。全国の事業者に対しては、旅客船のハッチ(船首甲板の開口部)の確実な閉鎖や避難港の活用などを指示。自主点検も実施するよう指導した。省内では技術検討会を設置し、小型旅客船の隔壁の水密化などを検討していくという。
ハッチの点検が強調されたのは、開口部を密閉するための部品に不具合があり、そこから大量の海水が「KAZU Ⅰ」に流入したことがわかったからだ。海水は船内の電子部品をショートさせ、エンジンを停止させた可能性があると運輸安全委員会は結論づけている。
中間的な「経過報告」とはいえ、沈没に至るプロセスは綿密に解明されており、今後の調査は精度をさらに高めていくことに重点が置かれる。
運輸安全委員会は国交大臣の所管であり、運輸安全委員会設置法に基づいて活動している。法が求める調査結果公表までの期間は、原則1年。「KAZU Ⅰ」の事故調査についていえば、事故発生から1年後の来年4月末ごろをメドに最終報告書をまとめる方向になろう。経過報告の公表時期も法の要請に従った、順当なタイミングといえるだろう。
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