なぜ今、世界のトップエリートは哲学を学ぶのか 起業家が学び、グーグルが哲学者を雇う理由

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 たとえば、プラトンの「イデア」、デカルトの「コギト」、ヘーゲルの「ガイスト」、ニーチェの「永遠回帰」など、挙げていけばキリがありません。こうしたコンセプトによって、どんな世界が切り開かれてくるのか、ぜひとも自分自身で体験してほしいものです。

哲学は、時代が大きく転換するとき求められる

それにしても、「なぜ今」なのでしょうか。それを理解するカギは、哲学の歴史にあります。哲学史を眺めて気づくのは、哲学者たちが時期的に塊をつくって登場することです。たとえば、ソクラテス・プラトン・アリストテレスとか、カント・フィヒテ・シェリング・ヘーゲルのように、ほぼ同じ時代に一挙に登場するのです。一人だけポツンと出てくることは、ほとんどありません。

これは、哲学が時代の転換期に活発になることと関係しています。時代が大きく転換するとき、従来のような考え方やものの見方では対処できなくなります。科学史では、「パラダイム」とか「思考の準拠枠」と呼ばれたりしますが、周辺的な手直しやアドホックな改良では、うまくいかないのです。

こうした考え方の根本的な変化が、現代において求められているのではないでしょうか。たとえば、テクノロジーの変化を考えてみるとよく分かります。

15世紀ごろに始まったグーテンベルクの活版印刷術によって、近代的なメディア環境が整えられ、それに応じて社会が形成されてきました。しかし、20世紀の後半から、デジタル情報通信革命が起こって、近代的な社会をすっかり変えてしまうことになりそうです。

こうした時代の大転換によって、今までの思考の枠組みやものの見方を根本的に変える必要が出てきたのです。哲学はこのとき、まさに水をえた魚のように、新たな発想法に向けた活動に取り組み始めています。このような時期こそ、哲学に目を向けてはいかがでしょうか。

岡本 裕一朗 玉川大学 名誉教授

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おかもと・ゆういちろう / Yuichiro Okamoto

1954年福岡県生まれ。九州大学大学院文学研究科哲学・倫理学専攻修了。博士(文学)。九州大学助手、玉川大学文学部教授を経て、2019年より現職。西洋の近現代哲学を専門とするが興味関心は幅広く、哲学とテクノロジーの領域横断的な研究をしている。著書『いま世界の哲学者が考えていること』(ダイヤモンド社)は、21世紀に至る現代の哲学者の思考をまとめあげベストセラーとなった。ほかの著書に『フランス現代思想史』(中公新書)、『12歳からの現代思想』(ちくま新書)、『モノ・サピエンス』(光文社新書)、『ヘーゲルと現代思想の臨界』(ナカニシヤ出版)など多数。

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