なぜ今、世界のトップエリートは哲学を学ぶのか 起業家が学び、グーグルが哲学者を雇う理由

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たしかに、日本では、オリジナルの西洋語が翻訳される過程で、漢語が使われるようになり、身近な言葉ではなくなりました。たとえば、「存在」という厳めしい言葉にしても、もともとは「ある」という日常語とつながっています。

たとえば、「本が机の上にある」とか「彼女は美しい(美しくある)」といった表現で、よく知られたものです。「今日は寒い(寒くある)ねー!」と、普通に言っています。

ところが、「存在論」とか「存在問題」などといえば、そうした関連がまったく見えず、どこか天上の世界のようなお話に聞こえてしまうのです。そのため、日常的には縁遠く感じるかもしれませんが、実際には、日常生活で考えていること、感じていることと深くかかわっています。それにしても、哲学はどうして抽象的な概念を使うのでしょうか?

世界の見方がドラスティックに変わる

フランスの哲学者であるジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリは、1991年に発表した『哲学とは何か』のなかで、「哲学は概念を創造する」活動である、と述べています。ここで「概念」というのは「コンセプト」ですが、最近では哲学以外でもよく使われています。たとえば、商品や製品を開発するとき「コンセプト」が問われ、CMを流すとき「コンセプト」が強調されます。そう考えると、「概念=コンセプト」も、身近であるのが分かるのではないでしょうか。

では、哲学において「概念を創造する」とはどんな意味でしょうか。それを理解しやすくするため、私はいつも「思考のメガネ」と表現するようにしています。つまり、何ごとかを考えるとき、「この思考のメガネをつけて世界を見てごらん」というようなものです。そのメガネをつける前と後(ビフォー・アフター)では、世界の見え方がすっかり変わってくるのです。偉大な哲学者ほど、世界の見え方がドラスティックに変わるような「思考のメガネ」を提供しています。

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