「silent」規格外のヒットがもたらす4つの影響 驚異的な配信再生数で試されるテレビ業界の今後

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また、“耳の病気や手話を扱ったドラマ”というジャンルに目を向けると、1995年の「愛していると言ってくれ」(TBS系)、1995・1996・2001年放送の「星の金貨」シリーズ(日本テレビ系)、1997~2001年にスペシャルドラマとして5度放送された「君の手がささやいている」(テレビ朝日系)、2004年の「オレンジデイズ」(TBS系)、2008~2009年の昼ドラマ「ラブレター」(TBS系)などがあり、今年3月~5月にも「しずかちゃんとパパ」(NHK BSプレミアム)が放送されました。

つまり、「何度となく放送されてきた定番ジャンル」ということ。無理に新しいものを探さなくても、「定番ジャンルを現在の世の中に合わせてアップデートさせつつ、丁寧に描いていけば十分見てもらえる」ということでしょう。

目先の数字より若手を育てる必要性

「silent」が今後のテレビ業界に与えるであろう2つ目の影響は、若いスタッフとキャストの抜擢。

村瀬健プロデューサーが脚本家に起用したのは、昨年「第33回フジテレビヤングシナリオ大賞」を受賞したばかりで、連ドラデビュー作どころか、出品作以外は一度も書いたことがない29歳の生方美久さんでした。いくら才能にほれ込んだとしても、村瀬プロデューサーは「うまくいかなかったら自分がフォローするしかない」「本当に最後まで書き切れるのか」などのリスクを承知で抜擢したのでしょう。

さらにチーフ演出の風間太樹さんは、映画化もされた「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京系)や、業界内で評価の高い「うきわ ―友達以上、不倫未満―」(テレビ東京系)などを手がけた若手演出家。技術こそ評価されていましたが、まだ31歳の若さであり、ゴールデン・プライム帯の連ドラは初めてだけに、こちらも思い切った起用だったのです。

生方さんの生み出すセリフも、風間さんが見せる映像も、みずみずしく繊細で、若いクリエイターの魅力があふれていました。民放各局は若年層も見られる番組制作を進めていますが、若いクリエイターを起用し、育てていくべきであるにもかかわらず、それができていなかったのです。実際、脚本家も演出家も40~50代が多く、1990年代から2000年代に活躍した人の起用が続いていました。

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