作品の売りでもある最先端の映像技術VFXを派手なバトルシーンだけに集中せず、余すところなく使われていることもスケール感のアップさをさりげなく表しています。植物化した東京の光景は圧巻です。本物の植物にVFXで植物を足す作業を要しながら、渋谷や六本木、新宿、ちょっと足を伸ばして中野や荻窪、そして吉祥寺や二子玉川など郊外まで舞台を広げ、植物が鬱蒼と生い茂る東京が出没します。
本格的なアクションと大規模セット
7つのゲームが展開される全8話の構成もテンポの良さとセットのビジュアルが際立っています。主役のアリス(山﨑)とウサギ(土屋)が参加するゲームはどれも頭脳と体力が試され、本格的なアクションはもとより大規模なセットも印象的。たとえば、キューマ(山下)と戦う「すうとり」ゲームは色とりどりの巨大コンテナが並ぶコンテナ埠頭で約1カ月にわたってロケ撮影が行われています。
それとは対照的にチシヤ(村上虹郎)が参加するゲームは心理戦で恐怖を煽ります。硫酸が入った天秤の下で勝負する「てんびん」ゲームは、そのシチュエーションのリアルさによって目を覆いたくなる残酷な死が迫ってきます。また静と動が交互に繰り広げられていくことで途中離脱を防ぐ戦略性を感じます。
1つだけ残念なのは、1時間20分ある最終話。そこでアリス(山﨑)が追い求めた“今際の国”の存在の謎が明かされるわけですが、同時に湿っぽい。シーズン1から続行した佐藤信介監督をはじめ思い入れのある制作スタッフが最終話も丁寧に作ったことそのものは否定しませんが、真面目に登場人物1人ひとりの物語を回収してくれるものだから、フィナーレ部分が少々長すぎるように思います。配信ドラマ特有の尺の制限がない面が良くない方向に転んでしまっています。
そんな不満も多少ありますが、全体的には期待値を超えた続編です。Netflixの代表作にある「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のようにNetflixでは予想以上にヒットした作品はシーズン2以降、製作費がアップし、スケール感が増す傾向があります。「今際の国のアリス」はまさにそれに当てはまります。
しかも、シーズン1より中身が失速するケースが少なくないなかで、俳優の起用からアクションシーン、ストーリー構成、テクニカルな部分まで向上したのは見事なものです。日本のドラマが世界で勝負できるヒントが詰まっている作品と言えます。
シーズン1が2020年12月に配信されて以降、Netflixでは韓国発の「イカゲーム」が牽引するかたちでアジア作品の躍進が続いていますから、「今際の国のアリス」の続編の数字上の結果も気になるところです。
Netflixが12月19日から25日までの1週間を集計したTOP10ランキング(非英語TV番組)では配信開始からわずか4日間で早くも世界1位をマークしています。アメリカを含む世界90カ国でTOP10入りし、「イカゲーム」初登場時の総視聴時間とほぼ並ぶ数字です。年末年始の視聴時間が伸びる時期にどこまで伸ばしていくのか。主役の山﨑と土屋に加えて山下の話題のシーンがカギとなっていきそうです。
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