【産業天気図・空運業】燃料急騰が直撃、旅客の戻りも鈍く『曇り』から『雨』へ
●お天気概況
足元のゴールデンウイークの旅客輸送数を見ると、鉄道はJR6社計で前年同期比1%増と、4月下旬に大事故を起こしたJR西日本を除けば比較的堅調だったのに対し、航空では日本航空、全日本空輸の2グループ(子会社等含む)が国際線は1%増程度と増勢ながら、国内線は約1%減と鉄道に競り負けた。背景には、3月に日本航空グループが相次ぐ安全トラブルで国土交通省から事業改善命令を受けたことによる航空のイメージダウンも大きいと見られる。両社とも収益柱である国内線の回復は当面不透明な状況が続きそうだ。
一方で、原油高騰に連動して航空燃料価格も上がっている。代表的な航空燃料であるシンガポール・ケロシンは、日本航空が1バレル=54ドル、全日空が同57ドルを今05年度の期初想定としたのに対し、4月中には一時70ドルまで急騰、足元も60ドル強の高値が続いている。この結果、日本航空、全日空とも05年度連結営業利益は小幅減が確実視されている(日本航空の会社側予想は営業増益だが、『会社四季報』では小幅減益を予想した)。足元『曇り』の空模様は、今年度末にかけて、さらに小雨がパラつく状況になりそうだ。
●今後の注目点
燃料価格の運賃転嫁は国際線(日本着便のみ)や貨物便では一部実現しつつあるが、本来、運賃転嫁の規制があまりないはずの国内線では、スカイマークエアラインズなど新興組を含めた価格競争が厳しく、各社なかなか運賃値上げができないのが現状。原油価格動向という外的要因に左右される展開が続きそうだ。その中で日本航空、全日空の両社が進めている収益構造改善策が注目されるが、全日空では比較的リストラ効果が発現しているのに比べ、日本航空では、頻発した安全トラブルへの対応もあり、リストラ策が十分に機能しにくい状況にある。来期以降、両社の収益状況に大きな格差が生じてくる可能性もありそうだ。
【大滝俊一記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
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